豊臣秀吉Photo:PIXTA

「応仁の乱」「刀剣女子」など、近年“日本史ブーム”が到来し、あらためて歴史を学ぶ大人が増えている。歴史小説の第一人者でもある童門氏も、「一流の人は、歴史を“情報”として捉え、自分の生き方に役立てている」という。もはや「歴史=重圧感、固い」というイメージは薄れ、現代人にとって歴史は、自身を磨くツールとして変化してきているのかもしれない。そこで今回は、『なぜ一流ほど歴史を学ぶのか』(青春出版社)から、現代のビジネスマンでも生かせる、歴史上の人物における「リーダーシップの在り方」を紹介する。

現代にも通ずる「組織での仕事」を実践していた武将とは

 歴史をいまに生かすという点で、普遍的なテーマはやはり、「リーダーシップ」についての参考例だろう。現代に落とし込んで考えるテーマとして最も身近で、親しみやすいからである。リーダーシップの取り方で、わたしがいまだに「うまいな」と唸り続けているのが、豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎の時代におこなった数々の事例である。

 奇しくもいまの愛知県から三人の天下人が生まれた。織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の三人だ。組織には必ずトップ・ミドル・ローの三層があって、上から経営者・管理職・一般従事者の階層に分かれる。信長と家康ははじめからトップ層の家に生まれたが、秀吉だけがロー層からスタートした。そして秀吉は、このロー層・ミドル層を経てトップ層にのし上がった。早くいえば、組織を形づくる「全階層」を経験したといえる。したがって、「部下の気持ちによく通じ、何を求めているかを理解している」立場だったといえる。この点ではある意味で、信長や家康よりも幸運だった。