女性の社会進出に関して、いまだ多くの課題は残るとはいえ、飛躍的に前進していることは事実であろう。ただし、組織内で上級幹部職に就く女性の数に注目すると、話は別だ。女性CEOの数は増えていないどころか、減少傾向にある。一方、筆者らの調査により、女性のほうが男性よりもリーダーシップ能力に優れているという興味深い結果が示された。統計調査にもとづき、女性の昇進を妨げている要因が明らかにされる。


 米国の歴史上はじめて、二大政党の一つから複数人の女性が、党公認の大統領候補となるべく出馬を表明している。しかし、2018年の秋に大勢の女性議員が当選するという前進が見られたにもかかわらず、テレビに出ている評論家たちは疑問を投げかけている。米国が国家の最高指導者に女性を選ぶ日は来るのだろうか、と。

 こうした疑問には困惑させられる。我々の企業リサーチの結果を鑑みると、特にそうだ。

 2012年に書いた2本の記事で(こちらこちら)、我々は360度評価を分析した結果について取り上げた。リーダーの立場にある女性は、あらゆる点で男性と同じように有能だと評価者から見られていたのだ。それどころか、リーダーシップ能力に関する測定項目の大半で、女性のほうが男性よりも――差異は大きくないものの――統計的に有意な水準で高いスコアを出したのである。

 我々は最近、この調査を新たに行い、再び360度評価のデータベースを検証した。この360度評価では回答者らに、リーダー個々人の総合的な能力にスコアをつけてもらい、あわせて能力項目別に優劣を評価してもらう。その結果、似たような発見を得た。つまり、リーダーの立場にある女性は男性リーダーと同じくらい――それ以上でなかった場合でも――有能だということである。

 それでも、気がかりな事実がある。ビジネス界で上級幹部職に就いている女性の割合が、前回の調査時からさほど変わっていないことだ。フォーチュン500企業のうちで女性CEOは4.9%、S&P500企業のうちで女性CEOは2%にすぎない。加えて、この割合は世界的に見て減少している。

 もちろん、このように上級幹部職の女性が少ないことには、多くの要因が絡んでいる。何世紀にもわたって、女性に対する文化的なバイアスが、広い範囲で存在してきた。そして、ステレオタイプはなかなか根絶されない

 人々は長い間、こう思い込んできた。ほとんどの女性は組織のトップの地位に就くことを望まず、トップ争いをみずから避けるものだ、と(最近の研究では、これに異論を唱えているが)。多くの研究結果によれば、無意識のバイアスが採用や昇進の意思決定に大きな影響を及ぼしており、これも要職に就く女性の数が少ない要因になっている。

 我々の現在のデータは、このバイアスが間違っており、不当であるという点で有無を言わせない証拠を提示している。組織のあらゆるレベルで、それに実質的にすべての職能分野で、女性は上司から――特に男の上司から――男性よりもやや能力が高いと見なされているのだ。そこには伝統的に男のとりでだったITやオペレーション、法務も含まれる。

 下記の表にあるように、女性が優れていると評価されたのは、「イニチアチブを取る」「再起力(レジリエンス)がある」「自己開発に励む」「結果を出す意欲がある」などであり、「誠実・正直」のスコアも高い。実際のところ、我々が頻繁に測定する能力項目のうち84%で、女性のほうが有能だと思われている。

 今回の新たなデータによると、男性は2種類の能力で女性より高く評価されている。すなわち「戦略的な視点を養う」と「専門家またはプロとしての知識」で、これらは前回の調査でも女性より高く評価された項目だった。