自分としっかり向き合う時間を作れ

本田 北欧の人への取材で言われたことで、そうかもしれないな、と思うことがあったんです。それは、日本って、選択肢が多すぎて、選択できなくなっちゃってるんじゃないか、ということです。北欧って、選択肢もシンプル。だから、悩むことが少ない。余計なものも持たないし、派手な生活への欲求も小さい。

 実は北欧も、90年代前半までは日本っぽかったんです。ところがバブルが崩壊して、今のような社会システムになった。だから、物質至上主義を覚えている人たちもいて。モノを買い続ける親を見て全然幸せそうに見えなかった、と言っている人たちもいました。ここから大きく転換していったわけです。

 このときに何が問われたかというと、選択肢を減らすことだった。これから必要になるのは、選択肢を絞り込む能力なんです。シンプルに暮らしたいのであれば、真剣に自分の生活や人生を考えないといけない。しかもそれを、自分の意志で決めていくことが求められる。そこに、クリエイティビティが必要になってくるんです。

『媚びない人生』でキムさんが書いている、自分に向き合って、何が本当に自分にとって大事なのかを、真剣に考えないといけない時代が来ているということです。

キム それが一番苦しいことなんですよね。向き合い方もなかなかわからない。多くの人は、自分のアテンションの8割以上を外に向けているんです。例えば学生の就活にしても、他者の目や社会の目が実はもっと大きなウエイトを占めてしまう。外の世界を遮断して、自分と向き合うことは、実はなかなか難しい。

自分の声というのは、ものすごく小さな声なんです。外の声が少しでもすると、聞こえにくくなる。だから、『媚びない人生』でも書いた沈黙や孤独が必要になる。小さな声を自分で聞いてあげようという意志と忍耐力と関心がないといけない。自分と向き合うような環境や時間を自分で意識的に作らないといけない。忙しい世の中であっても。

本田 普通に仕事をしていたりすると、日々流されてしまいますからね。目の前のことで精一杯になってしまう。僕もその状態が好きじゃなくて。いっぱいいっぱいになっている感覚って、良くないスパイラルを生み出すから。一生懸命やっているんですよ、目の前のことに。

 でも、やっぱり一度、立ち止まって、本当にどうしたいのか、どうなりたいのか、これでいいのか、本当は何をしたいんだ、みたいな本質的なことを自分で考えないと、永遠にそのスパイラルから抜け出すことはできない。自分に向き合う時間を投資することは、極めて大事なことだと思います。

キム 一番喜びを感じられるのは、自分が理想とする生活と、今の生活が完全に一致したときだと思うんです。ところが、その理想とする生活が本心から思っているものでなかったとしたら、幸福感は訪れない。表向き社会的な成功を遂げたとしても、幸せになれない、といったことにもなりかねない。

『媚びない人生』では、ペルソナと表現しましたが、自分に向き合えていないと本当じゃない自分を演じている可能性があるんです。本当に理想とする生活と今の生活の乖離を感じながら、矛盾の中で生きている。それでは、本心から幸せを実感できない。

 大事なことは、自分らしく自然体で生きていくこと。そのためにも自分と向き合うことが大切になる。それは簡単ではない。でも、だからこそ、挑まないといけないことなんです。


 
大人たちが目指してきた幸福の形では、<br />もう幸福になれないと若者たちは気づいている<br />【本田直之×ジョン・キム】(後編)

 

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大人たちが目指してきた幸福の形では、<br />もう幸福になれないと若者たちは気づいている<br />【本田直之×ジョン・キム】(後編)
定価:1,365円(税込)
四六判・並製・256頁 ISBN978-4-478-01769-2

◆ジョン・キム『媚びない人生
「自分に誇りを持ち、自分を信じ、自分らしく、媚びない人生を生きていって欲しい。そのために必要なのは、まず何よりも内面的な強さなのだ」

将来に対する漠然とした不安を感じる者たちに対して、今この瞬間から内面的な革命を起こし、人生を支える真の自由を手に入れるための考え方や行動指針を提示したのが本書『媚びない人生』です。韓国から日本へ国費留学し、アジア、アメリカ、ヨーロッパ等、3大陸5ヵ国を渡り歩き、使う言葉も専門性も変えていった著者。その経験からくる独自の哲学や生き方論が心を揺さぶられます。

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大人たちが目指してきた幸福の形では、<br />もう幸福になれないと若者たちは気づいている<br />【本田直之×ジョン・キム】(後編)定価:1,470円(税込)
四六判・並製・192頁 ISBN978-4-478-014707

◆本田直之『LESS IS MORE 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。
北欧諸国があらゆる「幸福度ランキング」で上位を占めているのはなぜか。世界的に見ても豊かなはずの日本が、どうして81位なのか――。
ハワイをベースにノマドライフを実践する本田直之が幸福度ランキングトップの北欧(デンマーク、スウェーデン、フィンランド)の人たちと幸福について語り合って得た、確信。

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