『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』の著者でクレーム対応のプロ、山下由美さんがこれまでにない画期的なクレーム対応の話しかたを初公開。「怒鳴る」「キレる」「自分が正しいと言い張る」「理詰めで責める」「言い分が見当違い」「多人数で取り囲む」「シニアクレーマー」などあらゆるお客さまからのクレームを、たったひと言「そうなんです」と言わせるだけで解決します。

クレーム対応の話しかた 最悪パターン5例

クレーム対応のよくある5つのNGパターンとは?

 ここでご紹介する話しかたは、日々、お客さまのクレームや怒りにさらされ、困り、呆然としているみなさんのためのスキルです。実際に多くの企業で導入され、さまざまな現場で効果が実証されているものです。

 ここで、まずクレームをするお客さまの心理状態を考えてみましょう。通常の人には理性で自分の感情をコントロールすることは難しいものです。とくに怒鳴っているお客さまは、積み重なるストレスや予想外の事態にうまく対処できずに悲鳴を上げ、助けを求めている状態ともいえます。

 助けてほしいのなら、何も怒らなくてもいいのではないか? 助けてほしいとお願いすればいいのに……と思いますよね。実際、私もそう思っていました。ところが、何度もクレームに対処するうちに、ある時、理解しました。怒鳴っている本人は「自分が助けを求めている」ことに気づいていないのです。

 そんなときに、あなたが怒っている(じつは困っている)お客さまを助けよう! そう思ったときに知っておいてほしいのが、人を助けるには「心構え」と「スキル」の両輪が不可欠であることです。

 たとえば、川で溺れている人を助けるレスキュー隊員も、人を助けるための心構えとスキルを持っています。救助のためのスキルはなんとなくイメージできるでしょうが、「心構え」のほうはピンとこないかもしれませんね。

 人を助ける際に必要な心構え、それは「助けられるのは自分だけ」という熱い想いと、「自分も無事に帰還する」という冷静さです。

 目の前のお客さまを助けるためには、まずは相手の状況把握が第一歩です。何についてどのように困っているのか。それとも悪質なクレーマーで、意図的にこちらを困らせようと騒ぎ立てているのか。あるいはパニックを起こしていて、単に声が大きくなっているだけなのか……。

 怒っているお客さまに笑顔で接客したり、過剰な対応をするなど、その場しのぎのご機嫌取りは、クレーマーを量産したり、最終的に自分に跳ね返ってくるだけです。現場や企業はそのことを肝に銘じて、きちんとクレームに対処していただきたいと思います。

 ところが実際は、「お客さまのクレームにはこう対応すればよい」という間違った考えが現場や企業に数多くはびこっています。おそらく、みなさんも良かれと思って、かえってお客さまの怒りを掻き立てる言動をしていないでしょうか。

 誰でも今日から実践でき、効果を実感できるメソッド「超共感法」についてお話する前に、まずクレーム対応のよくある5つのNGパターンを紹介しましょう。

NGパターン(1) 怒鳴る相手に冷静に振る舞う
 一般的なクレーム対応では、「怒鳴られても冷静に対応しましょう」と教わります。そして、言われたとおり実行したところ、相手の怒りがさらに増した……そんな経験を持つ人は多いのではないでしょうか。

 でも、相手の怒りが増すのも当然です。こちらが冷静に対応すればするほど、相手は「自分がこんなに大変な状況だと訴えているのに、それがわからないのか!」と感じてしまうからです。心の中は冷静さを保たなければなりませんが、相手に示す振る舞いは冷静であってはなりません。

NGパターン(2) 誤解を解こうと、正しい情報を伝えようとする
 相手が勘違いをして怒っていると、つい「こちらは間違っていないのに」という思いから、必死になって正しい情報を伝えたくなるものです。しかし、クレームの初期対応としては不適切です。

 怒っている状態のときに、あれこれ理屈を言われても、怒っている本人には「そんなの言い訳だ」「こちらの立場になって考える気がない」としか思えず、怒りをますますヒートアップさせるだけです。

NGパターン(3) ひたすら謝る
 クレームを受けたらまずしなければならないことは、言うまでもなく、謝ることです。相手の勘違いからくるクレームや無理難題であっても、謝らないことには事が収まりません。

 一方で、ひたすら謝り続けて、相手の根が尽きるのを待つような方法はおすすめしません。多大な時間を要しますし、クレームを言うことをあきらめさせたとしても、相手の怒りを消せたわけではないからです。

NGパターン(4) 「ほかではやってくれた」という言葉を鵜呑みにする
 「ほかのスタッフはサービスしてくれた」「他店では対応してくれた」などの言葉がよく登場します。実際、セミナーの受講者からも、「『ほかではやってくれた』と言われると断れなくて……」という相談をよく受けます。

 しかし、こうした物言いに屈して要求をのんではいけません。1度ごねてうまくいったことが2度目もうまくいくと、心ならずも普通の人が、クレーマー化してしまうことも珍しくありません。

NGパターン(5) 怒っている相手の話を傾聴する
 相手の心が怒りや不満で渦巻いているときに発せられる言葉は本人さえもよく覚えてない類いのものです。

 そうした言葉にじっと耳を傾けても、話が終わる頃には、怒っている本人は最初に何を言ったか忘れていて、また同じ話を始めるか、逆にまったく違った主張を始める状況を繰り返すことになります。

 以上、クレーム対応でしがちな代表的な5つのNGをご紹介しました。普段、みなさんもこうした間違いを犯していませんか? 日々のクレーム対応でお悩みの方は、まずは「常識」を疑ってみることから始めてみましょう。