これまで、個人の学習意欲について、「授業以外で学ばない人が増えている」「詰め込み型教育が意欲を低下させている」など学校段階を中心に語られることが多かった。しかし、こうした学習意欲の低下問題はいまや社会人についても例外ではない。当研究所の調査によると「最近1ヵ月間に自分の意思で学び行為や活動を行った社会人」は5人に1人に過ぎない。また、特に深刻なのは会社を支え、引っ張っていく重要なポジションにあるはずのミドル世代における学習意欲の極端な低下である。

 本稿では、学校から社会への移行という重要な時期を過ごしている社会人初期のスターターと40代のミドル層を中心に、社会人の学習意欲低下の現状と学習意欲の醸成に向けた施策について考えてみたい。

「やりたいこと」を明確に持って入社したのに、まったく異なる仕事をやり続けざるをえず、意欲がわかない。スキルを習得することがキャリアパスにどうつながるのかが見えない。また、事業の撤退や移転、新規の展開など、環境が激変するなかで、これまでのやり方が通用しなくなった。

 社会人の学習意欲を低下させる外的要因は多い。こうした環境に置かれたスターターやミドルに対して、どのように新たなスキルの獲得を促すことができるのか。

 こうした問題を解決するために、まず学習意欲を高めるための「動機」に着目し、グローバル社会の中で「意欲負け」しない個人をつくる施策の検討が必要だと考えた。

学習意欲を引き出す
「内容の重要性」と「功利性」

 最初に、社会人の学習意欲の現状を把握するにあたり、学習意欲とは何かを探る。教育心理学の分野では長年にわたり、報酬や賞賛・叱責といった「外発的動機づけ」と学習すること自体を自己目的的に求める欲求、つまり活動・行動自体が楽しく目的である、という「内発的動機づけ」の2つに動機づけを分類してきた。