雑誌、コミック、ビジネス書、実用書……
横断的な知識が求められる店長職の難しさ

——ご自身が店長になってから、雑誌も、コミックも、小説も、すべてのジャンルを見なければいけませんよね。大変に思うことはありませんか?

山本 正直に言うと、自分とあまり関わりのないジャンルを扱うのは辛いです(笑)。たとえば、私は料理をしないので、料理の実用書のことはどうしてもわからないことがあります。育児書なんかも同じですね。分からないなりにも目を通してみますが、そういうときは、詳しいパートさんから意見を吸い上げて生かしています。

 あとは、もしかしたらここでも前職の経験が生きているのかもしれません。私が勤めていた雑貨店に足を運ばれるお客様は専門家でこだわりを持った方でした。絵の具や木材について細かい質問をされることもあります。もちろん深いところまで分かりませんが、分からないなりにセールスポイントを勉強していました。

くまざわ書店大手町店 山本善之さん(前編)<br />「できないことを探してもキリがありません」<br />30坪のハンデを武器に変え、競合店に立ち向かう<br />改札前では特徴ある看板が存在感を見せている

——山本さんが考える、くまざわ書店の特徴はどんなところにありますか?

山本 書店というと、どちらかといえば図書館に近いような、本の専門家がいるというイメージを持たれているのかもしれません。もちろん、書店が持つ社会貢献的側面もとても重要だと思います。しかし、会社が存続しなければお客様に本を届けることはできません。

 くまざわ書店は、社会貢献の役割を果たしながら、同時に売上も大切にしていることを感じます。これからの厳しい環境に耐えうるシステムを持っているというところは「とてもいいなぁ」と思っています。

今置かれている環境に不満をこぼすのではなく、むしろ武器にして戦っていく。限られた時間でのインタビューではありましたが、前向きに、実直に仕事と向き合う山本さんの姿勢が伝わってきました。
後編は8月8日(水)に公開です。商品部との綿密な情報共有が生み出す効果、日本有数のビジネス街で生き残るために意識していること。そして、仕事にかける山本さんの熱い思いを語っていただきますので、ぜひご覧ください。