本稿執筆時点で発表されている4~6月期の企業業績は前年比では減益だが、今のところ筆者の予想をやや上回って推移している。米国企業の決算もおおむね市場の予想通りだ。

 筆者は「2019年10~12月期には企業収益は増益に転じる」と予測している。株価の下値は堅く、株価の上昇局面が今年末から来年にかけて訪れるとみている。

 しかし、より長い期間で見ると、米国の景気サイクルがいずれは後退局面に向かうという懸念は残る。今回はこの状況でどのような投資戦略を取るべきかを考えたい。

 下図・上では米国の利上げ局面と景気後退局面に日米株価の推移を重ねている。米国の景気サイクルなので米国の株価が反応するのは当然であるが、01年のITバブルの崩壊から日米の株価は連動するようになっている。

 そして、米国は08年のリーマン・ショック後、10年を超える景気拡大を続けており、FRB(米連邦準備制度理事会)は16年からは利上げモードであった。

 しかし、今回FRBによる利上げ期間が終了した。歴史的には米国の利上げ期が終了後、しばらくして景気後退局面が来ていることが分かる。つまり、利下げは景気ピークアウトのサインではないか、という疑問も湧く。

 当社では現在の状況は注視すべきだが、投資を全部引き揚げるような悲観的な状況ではないとみている。そして投資機会も存在する。

 上図・下でも分かるように投資家は株式に対して悲観的で、REIT(不動産投資信託)や国債などの比較的リスクが低いと思われる資産に対して資金を振り向けている。

 われわれは、TOPIX(東証株価指数)500から配当利回りが高く、なおかつ04年から一度も減配していない安定した配当政策を持つ47銘柄をREITのパフォーマンスと比較してみた。

 18年初からのパフォーマンスは大きく劣後しており、47銘柄の現在の配当利回りはREITとほぼ同じ水準まで売り込まれている。これは、「株式」であることのプラスの側面を投資家が評価していないことを示している。

 もし、米国の景気後退が来るのであれば、業績は伸びなくなる。米国の政策金利はさらに引き下げられ、景気後退によって投資家のリスクオフの姿勢が強まれば、逃避通貨としてさらに円高が進むという日本株市場にとってマイナスのサイクルが始まるかもしれない。

 このシナリオを多くの投資家が懸念しているのであろう。しかし、同時に景気がこのまま高原状態を続けるという可能性も十分残っている。われわれから見るとあまりに割安に放置されている株式があるため、銘柄を選びながら投資を続けるのが賢明だと考えている。

(UBS証券ウェルス・マネジメント本部ジャパンエクイティリサーチヘッド 居林 通)