湘南ベルマーレ曹監督パワハラ疑惑の渦中にある湘南ベルマーレ曹監督 Photo:JIJI

湘南ベルマーレが大きく揺れている。情熱あふれる指導でJリーグでも異彩を放つハードワーク軍団を育て上げてきた曹貴裁(チョウ・キジェ)監督に、一部の選手やスタッフに対するパワーハラスメント行為疑惑が浮上。Jリーグによる調査が終了するまで曹監督は活動自粛となり、一連の騒動が引き金になる形で、15日にはチーム得点王が電撃的にベルマーレを退団した。クラブ史上で最長となる8年目の指揮を執る曹監督の下で、いったい何が起こっていたのか。(ノンフィクションライター 藤江直人)

曹監督の厳しい指導を求めて
入団・移籍してくる選手も多かったが…

 湘南ベルマーレが激震に見舞われている。前身の藤和不動産やフジタ工業、ベルマーレ平塚時代を含めて、半世紀を超えたクラブ史上で最長となる8年目の指揮を執っている曹貴裁(チョウ・キジェ)監督に、パワーハラスメント行為疑惑が報じられたのは12日だった。

 一部スポーツ紙による報道を受けて、ベルマーレはJリーグによるクラブ幹部、スタッフ、選手に対するヒアリング調査に全面的に協力することを確認。調査が終了するまでの間、曹監督が練習での指導と試合での指揮を自粛することも急きょ決めた。

 オフをはさんで練習が再開された13日から、曹監督の姿は見られない。謹慎や休養ではなく、クラブ側は「疑義を正しく審査いただくための措置」と指揮官の活動自粛理由を説明するが、存在感があまりにも大きかった分だけ、チーム内にはどうしても動揺が広がる。

 15日にはリーグ戦でチーム最多の5ゴールをあげているMF武富孝介が、期限付き移籍契約を解除して浦和レッズへ復帰することが電撃的に決まった。28歳の武富は2013シーズンから2年間ベルマーレでプレーし、今シーズンから5年ぶりに復帰していた。

 再びベルマーレの一員になった理由は、以前にも指導を受けた曹監督の存在を抜きには語れない。夏の移籍期限が16日に迫っていた中での決断に、ベルマーレの公式ホームページ上で発表したコメントを介して、一連の騒動が引き金になったと武富は明かしている。

「曹監督の下でプレーしたいと思い、今季もう一度ベルマーレに来た自分としては、一時的な措置とはいえ、この先がどうなるか分からない状況のまま、100%サッカーに集中できるのか、チームのために力を出し切れるのか、不安を覚えているというのが正直な気持ちです」