「うつ」はまだ小さな芽のうちに摘み取りたい。でも、小さな芽に気付くには、日本のビジネスマンは忙しすぎるのかもしれない。厚生労働省によると、うつ病と診断された人は、1996年から2005年までの10年間で約2倍。雪だるま式に増えていく中、100万人を超えたのは、2008年のことだ。もう、うつは、遠くの誰かの話ではない。

 不眠の話でなぜうつの話をするんだ、と思った人もいるだろう。でも、うつの入口に待ち構えているもののひとつに、不眠をはじめとする睡眠の問題がある。充分な睡眠がとれていないと、ストレスを感じやすくなり、疲れやすくもなる。その状態が続くことで、うつを誘発することがあるのだ。だからこそ、睡眠の質にもっと目を向けなければならない。「寝ても疲れがとれない」「なかなか寝付けない」「ぐっすり眠れてない気がする」そのような感じがあったら、自身の生活を総点検してみよう。

 そもそも、睡眠はなぜ大事なのか。睡眠には、身体を休めると同時に、その間に脳を休息させ、記憶を整理するなどの役目がある。「何時間寝るのがベストですか?」とよく聞かれるが、ベストな長さには個人差があるだろう。今回は、「朝、前日の疲れをひきずらずにスッキリと起きることができて、よく眠れた、と満足できる睡眠」を目標として話したい。

 睡眠不足で向かう仕事が、いつも以上に効率が良い、なんてことはまずあり得ない。ましてや、身体を動かす仕事であったら、危険性も高まる。もしも睡眠不足で成果を上げることがあるとしたら、力まずに考えたアイデアが意外と良かった…とか、そんなことかもしれない。

 実際、身体の中では、睡眠不足によって副交感神経の働きがにぶくなる。そうすると、自律神経のバランスが悪くなり、血流が悪くなることで、身体だけではなく、脳のパフォーマンスも低下する。つまり、「あまり寝ていない」ということは、仕事を効率よくすすめるための足かせとなる。そして、脳のパフォーマンスが落ちることで、脳の働きによって生み出されている心も乱れてしまう。

夕食が遅く、朝ごはんを食べない人は要注意
不眠症が治らない人の食習慣

 食事記録から不眠を読み解くと、睡眠に問題を抱えるクライアントには大きく2つのパターンがある。ひとつには、夜の食事の時間が遅い、もしくは、夜の食事量が多いケース。私たちは、走りながら眠れない。それにもかかわらず、終電ぎりぎりまで飲み食いして家に帰り、内臓が消化という名のエクササイズを全力でしているというのに、当の本人は高いびきをかいて即刻寝ていたりする。これでは、睡眠の役割である“身体を休める”、ということができていない。それでは、疲れが残るのは自然なことだろう。