「ゲイはクリエイティブな能力が必要とされる職業に多い――」。よく聞く話だ。確かにそうかもしれない。実際にアーティストやファッション業界、とりわけデザイナーなどにゲイやレズビアンは多い。しかし、これは調査をし、明確な数字を基に説明することが難しい。

ラリー・ティーは、ゲイとして、また、音楽プロデューサーとして第一線で活躍する、知る人ぞ知る存在。バイセクシュアルであることをカムアウトしているレディー・ガガのプロデュースにも関わった。そのラリー・ティーは、ゲイのクリエイティブな能力を肌で感じ、ゲイは卓越した才能を持つ者が多いと話す。ゲイ・コミュニティーを取り巻く環境の変化から、ゲイ・コミュニティーが周囲に与えてきた影響まで、さまざまな視点で話を聞いた。(聞き手/在米ジャーナリスト 津山恵子)

エイズ問題が転換期
ゲイ認知が広がった

ゲイはクリエイティブな才能の持ち主<br />その魅力は人を呼び寄せ、街も一変させる<br />――ラリー・ティー インタビューLarry Tee/音楽プロデューサー、DJ。米ワシントン州出身、2010年ロンドンに移住。DJとして、多くのアーティストのプロデュースを手掛け、レディー・ガガのプロデュースにも関与。「エレクトロ・クラッシュ」というディスコ音楽ジャンルも編み出している。親日家で、マイルス・デイビスの衣装をデザインし続けた佐藤孝信氏とも親しい。ゲイであることをカムアウトして、活動を続ける。
Photo by Keiko Tsuyama

――この数年で、ゲイを取り巻く環境に何か変化を感じているか。

 1980年代以降、エイズが問題化した時が、転換期だった。もちろん、60年代からゲイの権利向上を求める運動は盛んだったが、なかなか家族や職場、政府機関などでカムアウトすることはなかった。

 しかし、職場でクリエイティブな仕事をしたり、リーダー格だった人がエイズで亡くなると、『あの人はゲイだったのか』と、人々がゲイは特別な能力を持つ人が多かったことに少しずつ気がつき始めた。

 俳優のロック・ハドソンや、現代まれにみるボーカリストだったフレディー・マーキュリーがエイズで死亡したことで、老いも若きもファンが『あの才能の持ち主がゲイだった』ということを知ることになった。

 現在は、ロック・ハドソンは別として、俳優ではなかなかカムアウトは難しいものの、コメディアンとミュージシャンはある程度カムアウトしても受け入れられる環境になってきた。