さようなら、とキツネは言った。ぼくの秘密を教えてあげよう。とても簡単なことさ。それは、心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないということなんだ。肝心なことは目では見えないんだよ――、アントワーヌ・ド・サン=テグジュベリの『星の王子さま』より
 

 住まいは丘の上にある。

 丘を登り切った先には、地元ではちょっとは知られた公園があり、立ち並ぶ木立などは、こんもりした雑木林のようにも見える。

 生態系を守るためか、園内の整備に除草剤や害虫駆除剤などの薬剤は使わないらしく、散歩していると、体長一〇センチほどのヘビの子どもや手のひらサイズの大きな蜘蛛、ミミズやトカゲなどがうろちょろしていたりする。

 ときおり、この先にカラスの巣があります。と注意を促すような看板が立てられていたりもする。どうやらカラスの巣も駆除しない方針らしい。スズメバチが巣をつくったら駆除するとは思うが。

 といった感じで、家の真裏が公園なのだ。

 住まいは、港の夜景を見下ろせたり、部屋から夏の花火を眺められたり、真裏が広い公園だったりとロケーションは申し分ないのだが、もうひとつ、ありがたいことがある。

 家中の部屋という部屋を風が吹き抜けて、夏場でも、エアコンがいらないくらい涼しいのだ。これがちょっと自慢。

 何年か前の六月に、いまの住まいに移った。それまで住んでいたマンションは冷暖房が二十四時間体制で完備されていて、部屋にはエアコンというものがなかった。だものだから、転居したときにエアコンを購入する必要があり、各部屋に取りつけるとしたら一〇台も必要じゃないか。

 と憤慨したものだった。