2.世界のプロを目指す(マトリックス左上)

 第2の選択肢は「世界のプロを目指す」。手に職をつけ、「この道では世界を探しても○○さんの右に出る者はいない」といわれるほどにそのスキルを高める生き方です。

 この作戦をとりやすい職業としてすぐに思いつくのは、職人、医師、弁護士などの専門職。また一般のビジネスパーソンでも、専門分野に関しては人後に落ちないといえるだけの技を身につけられるなら十分に選択可能な道です。

 たとえば日本の優れた金型職人の中には「その金型がないと世界中の工場が止まってしまう」というほどの技術を持った人もいます。こうなれば、たとえ外国語がまったく話せなくても、世界を相手に仕事をすることもできるかもしれません。

 ただし、世界で通用する水準まで技術や能力を高めるためには相当の研鑽を積まなければなりませんし、日ごろから世界と戦うんだという意識を持って仕事に取り組む必要があります。

 加えて、その価値をうまく人に説明・宣伝できるようになる必要もあるでしょう。これが欠けると、せっかくの技術や能力やノウハウが安く買いたたかれてしまうリスクが残ります。まさにいまこの状況に陥っているのが、このコラムの第2回でお話ししたような、アジアから狙われている日系企業なのです。

3.日本のプロを目指す(マトリックス右下)

 日本の総人口は減少しているとはいえ、いまだに1億人以上の巨大マーケットであることは間違いありません。日本は世界的に見ても言語や文化が特殊で、外部からはなかなか参入しにくい市場だと言われています。これらの市場特性を逆手にとり、日本に特化した生き方を選択するのがこの第3の方法です。

 このカテゴリに属する例としてすぐに思い浮かぶのはサービス業です。外国に行った人ならおわかりのとおり、日本のコンビニエンスストアのサービスは世界最高レベルです。100円かそこらのジュースを1本購入しただけなのに、ご丁寧に挨拶をしてくれ、包装までしてくれるのですから。このように心のこもったサービスは、日本以外ではまず望めません。

 日本人の文化や特性から言って、この水準のサービスがこの先低下することはまずないでしょうから、このような強みをもって日本のマーケットで勝負するという選択肢は大いにアリでしょう。また、この生き方を選択した場合、うまくすれば「世界のプロ」にアップグレードするという道も開けてきます。

 ただし、この選択肢について気をつけなければならないのは、競争の激化が必至だということです。日本全体のパイはじわじわと縮小していきますから、参入障壁が高いとはいえ、決して安住はできない選択肢であることをお忘れなく。