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岸博幸のクリエイティブ国富論

ネット課金は新聞・雑誌を救うか?

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第46回】 2009年7月3日
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 前回説明しましたように、米国の新聞社は主に広告モデルでネット展開を行ってきましたが、その収益構造を見ると、ネットからの収益は新聞社の全収益の1/10に過ぎません。現状では、新聞社にとってネットは儲からないのです。そのため、米国では、新聞がネットからの収益を増大させることを目指し、様々な議論が行われています。

なぜネットは儲からないのか

 それでは、なぜネット上の広告モデルは儲からないのでしょうか。一言で言えば、ネット上のエコシステムが、広告モデルで大きく儲かるのはグーグルを筆頭とする少数の検索サイトとなってしまっているからです。

 米国のネット広告市場の半分弱(46%)は検索連動広告です。この部分は参入障壁が大きいため、そこでの利益は少数のプレイヤーで山分けできます。当然、最大シェアを誇るグーグルが最大の利益を享受しています。

 残りの半分強はバナー広告や動画広告になるのですが、この部分はある意味で参入が自由な競争市場です。地上波放送ですと、電波資源の有限性ゆえにチャンネル数(=広告スペース)を増やすのには限界がありますが、ネット上でのウェブサイトの数は無制限に増やせますので、理論的にはネット上の広告スペースの供給も無制限に増大することになります。

 そして、実際にウェブサイトの数が爆発的な勢いで増大を続けている結果、例えば米国のネット上でのバナー広告の単価は昨年1年で50%も低下しました。広告単価がこのように下落しては、新聞に限らず、誰がいくら頑張ってもネット上で儲けられるはずがないのです。

 加えて言えば、昨年からの経済危機を契機に、それまでは年率数十%という驚異的な伸びを記録して来たネット広告市場全体の成長も頭打ちとなってきました。例えば米国のネット広告市場に関する幾つかの統計数字を見ると、最近は一桁の成長かマイナスとなっています。

 このように、ネット上では現在、広告スペースの継続的な増加に伴う広告単価の継続的な低下と、ネット広告全体のパイの伸び悩みが同時に起きているのです。これでは新聞がネット上で儲けられるはずありません。ネット上で広告モデルで儲けられるのは、グーグルなどの市場シェアを獲得した一部のプラットフォーム・プレイヤーだけなのです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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