まずSEJが行動計画の筆頭項目に掲げたのは、「オーナー・ヘルプ制度」の充実だ。この制度は、オーナーやその家族が急な病気や親族の冠婚葬祭などの際に、緊急に本部社員を従業員として加盟店に派遣できる仕組みだ。

 SEJは進捗状況で、「8月度は100%対応済」とアピールしている。ところが、行動計画を公表する以前から、そもそもこの制度は存在していた。ただし、完全に有名無実化していたと複数のオーナーが指摘する。

 ある関東地方のセブンのオーナーは、「数年前に父や兄が亡くなった時、本部の担当者から何の説明もなかったので、最近まで制度の存在自体を知らなかった」と打ち明ける。制度そのものを知らされていないのだから、家族に不幸があっても、本部に頼んで従業員を派遣してもらうことができなかったのだ。このオーナーは妻に店を任せて通夜や葬儀に参列したが、通夜に訪れた本部のその地区の責任者から、「なぜ通夜に奥さんがいないんですか?」と尋ねられたという。

 一方、別のオーナーは、加盟店契約の際に、この制度を使って「海外旅行に行けますよ!」と本部社員から伝えられたと証言する。ところが仕事が忙しく、実際には海外旅行に行く余裕はなかった。セブン&アイ・ホールディングスの広報センターは「現状でもオーナー・ヘルプ制度で年1回まで家族旅行に行くことができる」と説明するが、人手不足が深刻化する中で、海外旅行に行く余裕のあるオーナーは少数派だろう。

 有名無実化していた既存制度を正常化したことを、進捗の成果として掲げる本部の姿勢に、加盟店からは不満の声があがっている。

都内深夜なら時給は2000円超の従業員派遣制度
シフトが埋まっても店の利益は吹き飛ぶ

 利用できる店舗が9746店に拡大したという成果をアピールする「従業員派遣制度」も、オーナーからは不評だ。これは、加盟店がどうしても従業員を確保できずシフトが組めなくなった場合に、セブンが認めた複数の人材派遣会社に依頼して従業員を派遣してもらう仕組みだ。

 ところが、本誌が入手した資料によると、その時給は東京23区内のみならず都内の多摩地区であっても、時給は短期契約の日中で1500~1600円程度。深夜は1900~2000円、長期契約で深夜だと2200円を超えるケースもある。