昇る日産自動車、沈むガリバーインターナショナル
そこに自動車業界共倒れの構図を見る

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脱法ハーブとの共通項

 価格が「持ちつ持たれつ」の関係を生じさせるのは、よくある話だ。不遜な例で恐縮だが、「脱法ハーブ」が広まった原因として、煙草の大幅値上げがある、と筆者は推測している。

 セブンスターは現在、1箱440円。自動販売機で販売されている脱法ハーブは、600円あたりから。煙草が1箱200円程度で販売されていた時代であれば、脱法ハーブにはかなりの割高感があって、手を出す輩(やから)はいなかった。現在のように、煙草の価格に百円玉を1個か2個、上乗せした価格で脱法ハーブを買えるのであれば、そちらに手を出す「不逞の輩」が現われても不思議ではない。

 価格は消費者の嗜好を変える力を持つ。「役人はタバコへの高い税を、良いことをしてうまく税をとる方法」(「クルーグマン・ミクロ経済学」125頁)と考えているようだが、その安易なタバコ増税策が、思いも寄らぬ脱法行為を生んだ可能性がある。

 行政による取り締まりには頑張ってもらいたいものだ。しかし、「麻薬を禁止することは、麻薬に絡む犯罪を増加させる可能性がある」(「マンキュー経済学Ⅰミクロ編」150頁)ことを忘れてはいけないだろう。

 と、説明してきたところで、「下請けの収益チャンス」「中古車の公正価値」「脱法ハーブの価格」には、似通ったキーワードがあることに気づかれたであろうか。

 実は、「マンキュー経済学Ⅰミクロ編」76頁に登場する「機会費用opportunity cost」や、同398頁に登場する「埋没費用sunk cost」という概念を、婉曲に説明していたのである。本連載では、第56回コラム(東芝編)や第58回コラム(楽天vs.ヤフー編)で紹介している。日本経済新聞夕刊(2011年12月15日付)の『十字路』においても、「何もしないことのリスク」として、埋没費用が紹介されている。

 こうした概念を、数値例を使って説明するのであれば、その内容は非常に簡単にすませることができる。ところが、世に「数学嫌い」は予想以上に多いようだ。先ほど示した「440円」や「150頁」という数にさえ、拒絶反応を示す人が相当数いる。数値例や簿記のノウハウを避け、「中古車の公正価値」などの用語だけで説明することが、却って難しさに拍車をかけていることを理解してもらえばと考えている。

 新車や中古車、そしてタバコや脱法ハーブなどを買おうという場合、そこには機会費用や埋没費用が湧いて出る。これらをきちんと理解しておかないと、企業や政府の意思決定は、予期せぬ副産物を生むということだ。

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高田直芳 [公認会計士]

1959年生まれ。栃木県在住。都市銀行勤務を経て92年に公認会計士2次試験合格。09年12月〜13年10月まで公認会計士試験委員(原価計算&管理会計論担当)。「高田直芳の実践会計講座」シリーズをはじめ、経営分析や管理会計に関する著書多数。ホームページ「会計雑学講座」では原価計算ソフトの無償公開を行なう。

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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略

大不況により、減収減益や倒産に直面する企業が急増しています。この連載では、あらゆる業界の上場企業を例にとり、どこにもないファイナンス分析の手法を用いて、苦境を克服するための経営戦略を徹底解説します。

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