滋賀県大津市立中学校2年生の男子生徒が飛び降り自殺で死亡した「いじめ自殺問題」について、報道が過熱している。学校側が行なったアンケートにいじめを指摘する内容があったにもかかわらず、徹底した調査が行なわれていなかったことなど、学校や市教委の対応が問題視され、バッシングが強まっている。しかし、今の世論からどうしても見えてこないのは、いじめ問題の根源的な解決策である。一度話題になるとその都度感情的な報道が過熱し、報道が収まれば世論も沈静化。それを繰り返している限り、いじめが原因と考えられる児童・生徒の自殺はいつまでもなくならない。マスコミは「いじめ自殺問題」の何を伝え、何を伝えていないのか。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)

時ならぬ「いじめ自殺」の過熱報道
学校の爆破予告や犯人探しのデマも

 昨年10月、滋賀県大津市立中学校2年生の男子生徒が、いじめを苦に飛び降り自殺した事件が、ここにきて国民的な関心事に発展している。この「いじめ自殺問題」は、生徒の両親が総額7720万円の損害賠償を求めて地裁に提訴し、第1回口頭弁論が5月に行なわれたことをきっかけに、マスコミが報道合戦を開始したものだ。

 自殺した生徒は、複数の生徒から暴行や暴言を受けていたほか、数十万円を脅し取られていたなど、金銭のトラブルがあった可能性も指摘されている。生徒の自殺後、学校が行なったアンケートでいじめを指摘する内容があったにもかかわらず、徹底した調査が行なわれなかったことや、男子生徒の父親が昨年出した被害届が警察に受理されなかったことなど、新事実が次々と明らかになるにつれ、市教委、学校、警察の対応に世間の非難が殺到した。

 今月に入り、中学校に爆破予告が入ったほか、滋賀県知事に脅迫状を送った男性が逮捕された。ネットではいじめを行なっていたとされる生徒3人の実名が広まり、「加害生徒と関係がある」とデマを流された医療機関が「一切関係ない」という内容の文書を発表するなど、事件の余波はあらゆるところに伝播している。

 影響の大きさに、越直美・大津市長は7月6日、第三者による調査委員会を立ち上げることを表明。昨年被害届を受理しなかった警察も世論に押されたのか、11日には中学校と市役所に対して、いじめ自殺問題では異例となる家宅捜索を行なった。また、18日に自殺した生徒の父親が、同級生を滋賀県警大津署に告訴。捜査中の告訴は異例のことで、この理由は「処罰への強い要望を示すため」と報道されている。事態は収拾に向かう気配がない。