「英語が全然話せない」「皆の会話に入れない」「会議で一言も発言できない」。ネイティブを前にしたとたん、「英語が通じない」と悩む日本人は多くいます。一方で、日本人と同じく、英語でハンディがあるはずの非ネイティブは、うまくやっています。なんと、ビジネス英語には、非ネイティブが身につけるべき「絶対ルール」が存在したのです。
1年2ヵ月売上ゼロで窮地に追い込まれた著者が、今ではネイティブを部下に持ち、15ヵ国以上の外国人プロフェッショナルをマネージするきっかけとなった、非ネイティブが実践しているテクニックを『ビジネス現場で即効で使える非ネイティブエリート最強英語フレーズ550』にまとめました。学生時代に学んだ単語でじゅうぶん。使えるフレーズを多用し、ポジティブで丁寧な言い回しを意識すれば、英語での会話は怖くありません。「こんなとき、なんて言えば?」があっという間になくなるキーフレーズを中心に紹介します。

「美しい発音」より「丁寧な話し方」

 シンガポール人の多くは英語が第一言語ですが、街中では「シングリッシュ」と呼ばれる独特ななまりのある英語が使われています。ネイティブが英語だと気がつかないくらい、なまっています。このためシンガポールの学校やテレビの放送ではシングリッシュを使わず、発音の美しい英語の使用が推奨されています。

 実際、企業の採用においても、アジアNo.1のシンガポール大学の卒業生でシングリッシュなまりが強いシンガポール人よりも、無名のオーストラリアの大学を出たきれいな英語を話す人のほうが、高く評価されるのを見てきました。

 日本でも方言ではなく、標準語が好まれるのと同じです。私もアクセンチュアに入社した際、関西弁が聞き苦しいと指摘され標準語に直しました。しかし英語の世界では、英語の発音の美しさだけでなく、英語圏の常識も身につけていないと成功することはありません。シングリッシュしか話せないシンガポール人であっても、相手を気遣って丁寧な英語を話す人は、高く評価されています。

 オーストラリアやイギリスに留学して、なまりのないきれいな英語を学んだシンガポール人たちが活躍するのを見てきた私は、英語の発音のよさが、グローバルで成功する要素だと考えていました。

 しかし、今にして思うと、英語ができないことを言い訳に、自分に都合よく解釈してきたのです。シンガポールでさまざまな国の人たちと働き、非ネイティブでも世界で活躍する優秀な人たちと出会うなか、相手を慮った丁寧なコミュニケーションができる人が評価されていただけなのだとわかりました。

 海外の常識を知るシンガポール人たちは、異なる考え方に価値を見出し、異なる人種や文化、宗教に関心が生まれて、「Growth Mindset」(成長思考)が培われたことが評価につながったのです。

 英語の世界に飛び込むということは、1億2700万人の日本から15億人の世界へ飛び出すということです。圧倒的な多様性のなかで、「Trust」(信頼)と「Respect」(尊敬)を獲得していくことが強く求められるのです。

「信頼するあなただからこそ協力する」「尊敬しているあなたがそこまで強く求めるなら、私も手伝います」といった言葉を投げかけてもらえる信頼関係を築きあげていきましょう。そのためには、日々のコミュニケーションにおいて、独りよがりとならないように、常に相手への配慮、丁寧さがあふれる対応を心がける必要があるのです。

どんな相手でも「敬意」と「気遣い」を示す

 英語に対して、フレンドリーに大げさに話す言語というイメージを持つ人は多いと思います。日本語とは異なり、繊細さに欠けると思い込んでいる人も多いのではないでしょうか。

 外国人たちと仕事をして実感するのは、英語にも日本語と変わらず、たくさんの敬語・丁寧語があるということです。グローバルな環境で働くうえで、敬語や丁寧語をうまく使いこなせないのは死活問題です。

 日本は縦社会で、年齢・役職、相手の立場が自分よりも上か下かによって適切な敬語や丁寧語を使い分けます。しかし、グローバル社会では、皆が平等という前提でお互いに敬意を払い合うのです。

 日本の上司が部下に使うような命令調の言い方は当然ご法度です。部下であっても、立場・年齢・性別に関係なく、どんな相手にも丁寧に気遣いながら接することが求められます。

 つまり、敬語や丁寧語をうまく活用し、相手への敬意と気遣いを示すといった、英語を使ったコミュニケーションが求められるのです。

 外国人たちは、私たちが思う以上に相手への接し方に気をつけていますが、特に仕事ができる人ほど、英語を使いこなしています。しかもTPOに応じて、臨機応変に言葉遣いや表現を巧みに操っているのです。

 仕事では、いかにまわりの人たちを巻き込めるかが重要となってきます。それを意識して、英語での話し方やコミュニケーションを変えていくことが大切です。