これまで台湾、香港、上海、常州(江蘇省)、杭州(浙江省)等、中華圏の様々な都市で百貨店ビジネスを経験してきた斎藤克久・正大広場総裁。上海では上海久光百貨店の立ち上げを店長の立場で経験した、中華圏の小売市場を知り尽くした人物だ。その斎藤氏は現在、上海浦東の巨大ショッピングモール、正大広場(タイ最大のコングロマリットCPグループの傘下)の総裁として陣頭指揮を取っている。社会も経済も消費者も、日本とは比べ物にならないほどのスピードで変化する中国の小売市場について、展望と成功の秘訣を聞いた。

「消費者ありき」の商売が基本
中国もモノが売れない時代に突入

日本式を“そのまま持ってくる”商法は失敗する<br />上海ではモノが売れない時代に入ったと認識すべき<br />――齊藤克久・正大広場総裁インタビュー齊藤克久・上海帝泰発展、正大広場総裁

――上海では百貨店、ショッピングセンター(SC)が乱立し、大手百貨店・SCでも業績が悪くなっていると聞きます。

 上海の百貨店、SCが、自分達の都合をお客様に押し付けて商売をしているのが原因だと思います。「商品ありきではなく、消費者ありき」で商売を進めるべきなのです。

 中国でも上海のような大都市では、消費者が異常なスピードで進化していて、日本のように消費者のニーズが多様化しています。消費者が持つ商品知識が増え、自分なりのライフスタイルを追求するようになっているのです。有名なブランドを並べば売れる時代はもう終わり、消費者の本当のニーズに対応したものを取り揃えないと、売れない時代に突入しているのです。

 例えば、ルイ・ヴィトンのような有名ブランドのバックを購入する上海人は減っています。上海で有名ブランドのバックを購入するのは、地方から来た外地人が多いのです。

 センスのある上海人が増え、自分に合うものをブランドに関係なくコーディネートできるようになっています。こういったことを売り場に反映できない店が、成績を落としているのだと思います。