6月、アメリカではプライド月間だった。全米各地でLGBTの象徴であるレインボーフラッグを掲げ、パレードが開催された。そのなかでも、ニューヨークはアメリカ東海岸で最大規模だ。自らの存在を社会に示し、権利獲得へ向けて社会の機運を盛り上げようと、全米各地からLGBT関係者たちが集う。パレードの歴史と参加者達のお祭り騒ぎの様子を取材した。(在米ジャーナリスト・津山恵子)

ストーンウォールで
すべてが始まった

プライド・パレード取材記(上)<br />ニューヨークのパレードは縮小傾向<br />でも、待ち望んだ社会はすぐそこに!プライド・パレードの聖地、ストーンウォール・イン(写真後方)。写真は2011年のパレードで、店の前に多くの人が集まった
Photo:AP/AFLO

1969年6月28日、ニューヨーク・ダウンタウンのゲイバーで、全米で初めて同性愛者による「叛乱」が起きた。

 当時は異性の格好をして外を歩くだけで、警察に逮捕された時代。当然、マフィアが開く、ニューヨークのゲイの有名なたまり場「ストーンウォール」も、定期的に警察の強制捜査があり、身分証明書を持たない客や、女性の服を着た男性、あるいは女性でも「女性らしい服装アイテム」を3点以上身に付けているかどうかトイレで調べられ、身につけていなかった場合、当たり前のように逮捕されていた。

 しかし、この日は、逮捕した大勢の客を運ぶニューヨーク市警のバンの到着が大幅に遅れた。その間、店内に一列に並ばされていた客が、逮捕は不当だと抗議したり、外に逃げ出したりした。さらに、バンが到着するころには、大量逮捕を見ようと、近所のゲイや比較的リベラルな住民が店外に数百人集まっていた。

 当初、群衆は静まり返って見ていたという。しかし、一人の女性の格好をした客がバンに乗る前に激しく抵抗し、ハンドバッグで警察官を殴って、群衆に向かってこう叫んだ。

「なんで、見ているだけで何もしないの!」

 それをきっかけに、警察に対するヤジや投石が始まった。石はあっという間にビール缶や近くの工事現場のレンガに換わり、ストーンウォール周辺は大混乱になった。これが、ニューヨークのゲイが初めて、警察に立ち向かった瞬間だ。