株式レポート
7月24日 15時15分
マネックス証券

第20回 「地の利」(1) - 広木隆の「投資の潮流」

もうすぐロンドン・オリンピックの開幕である。日本選手の活躍を期待したい。常日頃から世界を舞台に活躍する一流選手は、大会の地がどこであろうと、あまり影響が少ないのかもしれないが、日本選手全体で見た場合、やはり地元開催が有利だ。日本の金メダル最多獲得数は1964年東京大会の16個。冬季は長野の5個が最多である(実は2004年のアテネでも東京に並ぶ16個の金を獲得している)。サッカー人気の普及により「ホーム」「アウェイ」という言葉はすっかり定着した感があるが、サッカーなどの競技における「ホーム」の有利、「アウェイ」の不利はいまさら説明するまでもないだろう。競馬の世界でも「アウェイ」の不利はあって、欧州競馬の最高峰、フランスの凱旋門賞は欧州馬以外に渡ったことがない。日本中央競馬の現役最強馬、オルフェーブルがこの秋凱旋門賞に挑戦する。その発表の場で、長く主戦を務めた池添騎手から地元フランスのスミヨン騎手への乗り代わりが伝えられたが、そうした事情を勘案すれば、それも致し方のないことだと思う。

それほど勝負事には「地の利」が重要だが、正反対の事例もある。テニスの4大大会のひとつ、全英オープン、別名ウィンブルドン選手権だ。開催国イギリス出身の優勝者は近年出ていない。1977年の女子シングルスでバージニア・ウェードが、男子シングルスでは1936年のフレッド・ペリーが勝ったのが最後。それ以降ひとりも英国人選手の優勝はない。権威と伝統を誇る同大会に世界中の強豪選手が集まり、地元の選手が勝てなくなってしまったのである。ここから「ウィンブルドン現象」という言葉も生まれた。市場経済における自由競争の結果、市場そのものは隆盛するが、プレーヤーの淘汰が進み、元々その場にいて本来「地の利」を得られるはずの者が敗れ、市場から退出することを指す言葉である。

その典型例が他でもない英国の金融街、ロンドンのシティである(というより、ロンドンのシティが初めてだったから「ウィンブルドン現象」という言葉がつけられた。もしも後述する「日本版ビッグバン」が先行していたら「ウィンブルドン現象」という言葉の替わりに「大相撲現象」という言葉が生まれていたかもしれない)。1980年代、サッチャー政権による「ビッグバン」(大規模な金融市場の規制緩和)によって、シティは大きく変貌・発展を遂げたが、その一方で伝統のあった地場証券などがほとんど外資系金融機関に買収されていった。シティは栄えたが、その繁栄を支えたのが外国人プレーヤーだったのである。

日本もこれにならって金融制度改革を行なった。1996年11月に第2次橋本内閣が提唱した「日本版ビッグバン」である。5年後の2001年には東京市場をニューヨークやロンドンのような国際市場にする、ということを目的に行われた改革だが、その当初の心意気に反して成果は十分とは言い難い。もちろん、今日こうして我々のようなインターネット証券が存在し、個人投資家の証券投資のお役に立たせていただくことができるのも、「日本版ビッグバン」のおかげである。そうしたことを含めて、「日本版ビッグバン」の功績がなかったとは言わない。しかし、昨今、目の当たりにする東京市場の地盤沈下の現状からは、東京市場をニューヨークやロンドンのような国際市場にするという当初の志は遥か彼方であると言わざるを得ないのも厳しい現実だろう。

その傍ら、東京株式市場の売買シェアに占める外国人の比率が上昇している。いまや日本株の売買高の6~7割が外国人の注文によるものだ。これはウィンブルドン現象なのか。日本株マーケットのグローバル化と言えるのか。次回はそのあたりのことについて語ろうと思う。




(チーフ・ストラテジスト 広木隆)

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(マネックス証券)


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