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職あれば食あり

古本店の店主がいつもおなかをすかせている理由とは?

まがぬまみえ
【第33回】 2012年7月26日
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 空腹だと、人間は何も考えられなくなる。些細なことでイライラもする。

 「おなかすいたなあ……」

 こうなるともはや、仕事どころではないのである。

 ところで、その「onakasuita」が店名の料理書専門古本屋を見つけた。

まるで友人宅のような
古本屋さんを覗くと…

 JR中央線に乗り、阿佐ヶ谷駅で下りる。アーケード商店街を左へ曲がり、ゆるい坂道を「まだか、まだか」としばらく上っていく。人通りのほとんどない、閑静な住宅街の一角にその店はあった。「onakasuita」と書かれた黄色い看板が目印だ。

 「中に冷たい麦茶をご用意しています」

 ドアを開けようとして、張り紙に気がつく。額の汗をハンカチでぬぐいながら「こんにちは」と入っていくと、店主の小川綾子さん(37)が早速、用意していた紙コップに、水筒から冷たい麦茶を注いで出してくれた。

 午前中から気温34度を記録する、暑い日のことだ。麦茶を飲み終えると、ようやくあたりを見回す余裕ができた。

 広さは約3坪。壁一面の本棚にはびっしりと料理本が並んでいる。比較的新しそうなものもあれば、希少本らしき豪華な装丁の本もある。中央には小さなテーブルと椅子が2つ置いてある。奥の方にあった椅子に腰かけてしばらく店内を眺めていると、まるで友人宅を訪れたような落ち着いた気持ちになった。

 小川さんが古物商の免許を取って古本を売り始めたのは、2008年12月のことだ。最初はインターネットのみの販売だった。

 「母親を亡くして仕事も手に付かないほど落ち込んでいた時に、主人が『自分で本を売ってみたら』と薦めてくれて。それで、インターネットの古本屋さんを始めたんです」

 それまでは、大手の書店で非正社員として働いていた。担当していたのはビジネス書だ。

 「ポップを書いたり、面陳したり、平積みしたりしながら見せ方を工夫するのは好きだったんです。自分の推した本が全国の売上ランキングで11位にまでなったことがあるんですけれど、その時は嬉しかったですね。手柄は担当者さんのものになるんですけれども、その担当者さんが『おかげで売れたよ』って教えてくれたので」

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