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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

漂流する私のサブプライムローン
いとも簡単に借金できた米国社会の帰結

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第1回】 2008年4月23日
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 筆者はアメリカに住みだして12年になる。銀行員が50歳で脱サラしてシリコンバレーで起業した。インターネットを使った情報提供ビジネスである。12年前に購入した住宅は3倍に値上がりした。アメリカの金融機関は不動産時価の7割ぐらいまでは使途を限定せずに貸してくれる。これをホームエクイティローンと呼ぶ。さまざまな金融機関から勧誘のDMが郵便ポストに入ってくる。

 筆者は2007年3月に保有している住宅の価格が大きく値上がりしていたのを発見し、ホームエクイティローンを借り入れることにした。無担保だが金利が割高なカードローンを整理するためである。ちょうどそのときにローンを斡旋するブローカーから勧誘の電話がかかってきた。かなり条件が良い。借入金利も下げられるし、十分な金額を貸してくれる。返済条件も緩やかで、斡旋料も無料である。早速当時借り入れていた地元銀行の住宅ローンを期前返済して乗り換えることにした。

 ブローカーは金利の一部だけを支払えばよい返済方式を強く勧めてきた。この方式だと金利の未払い分だけ元本が増えてしまうが、毎月の返済額が少ないので一番「楽」だという。二番目に勧めてきたのが金利だけは全額支払う方式である。元本は将来余裕ができたら払えば良いという。何と「楽ちん」なのだろうか。それでも筆者は金利を全額支払って更に元本を少しずつ返済していく方式を選んだ。日本人である。

ローンが次々と
転売されていった

 彼がいくつかの金融機関を当たって一番条件の良いところを探し出してくれた。無名の金融機関だが、これで調印しても良い旨伝えた。2日ほど返事がなかった。こちらから電話したら、「中西部の住宅ローン専門会社が倒産して市場が不安定になっているのでちょっと待ってほしい」とのことだった。

 それから2日ほどして彼から電話があり、ほかの金融機関が同じ条件で出してくれることになったので明日書類を持ってくるという。これも聞いたことのない無名の金融機関だった。無事に調印が済み、借入実行日も決まった。借入はこの銀行から実行された。

 実行日当日にまたブローカーから電話がかかってきて、「筆者宛ローンは実行日に別の金融機関に転売されたので、今後は転売先の金融機関に元利返済するように」との指示だった。早速返済案内書が届いたが、転売先はまたもや聞いたことのない銀行だった。同社のウェブサイトに行って、筆者の銀行預金から自動返済する手続きをとった。確認のためウェブサイトに書いてある電話番号に電話をしたが、誰も出なかった。

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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ


シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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