11月30日、相模鉄道とJR埼京線の直通運転が始まる。東京圏では珍しくもなくなった直通運転だが、この相鉄・JRはわざわざ本線から連絡線を新設して直通するという珍しい形態をとっている。そこで気になるのは連絡線上の新駅「羽沢横浜国大駅」。直通運転の電車しか通らないために本数が少ないし、直通運転中止の際には陸の孤島になりかねない立地なのだ。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

相鉄・JR直通運転で誕生する
新駅の「特殊な事情」

直通運転車両の試運転試運転をしている埼京線直通の相鉄12000系車両。その運行形態は独特だ Photo:PIXTA

 相模鉄道とJR埼京線の相互直通運転が、いよいよ今週末からスタートする。

 元々は東海道線の混雑を緩和するために、相鉄の二俣川駅から新横浜を経由して東急線大倉山まで結ぶ「神奈川東部方面線」構想から始まったこの計画。2004年ごろに相鉄とJRの直通計画が表面化すると、2006年に都市鉄道等利便増進法に基づき、相鉄・東急直通線と相鉄・JR直通線を一体的に整備する整備計画が認定され、2010年3月に着工した。

 ところが、貨物列車の合間を縫うように作業しなければならないJR東海道貨物線内の工事が難航。当初、2015年4月を予定していた開業は2018年度に、さらに2019年度下期へと、2度も延期された経緯がある。

 相鉄・JR直通線の運行形態は独特だ。相鉄は西谷駅から東海道貨物線横浜羽沢貨物駅に隣接して新設する羽沢横浜国大駅まで2.7kmの連絡線を建設し、東海道貨物線に接続。現在は貨物列車と一部ライナー列車のみが走行する東海道貨物線に乗り入れ、横須賀線の線路に入り、大崎から埼京線に直通する。つまり、両社が既存の路線から分岐した連絡線を介して直通運転を行うことになる。直通列車は1日46往復。接続駅となる羽沢横浜国大駅は当面、朝ラッシュ時間帯は1時間4本、それ以外の時間帯は2~3本の列車のみ発着する、都会の「ローカル駅」となる。

 東京圏で広く行われている相互直通運転だが、ほとんどの場合はターミナル駅か、その手前の駅で線路を接続して乗り入れており、本線から分岐した連絡線を経由して他路線に乗り入れるケースはまれだ。具体的には練馬から分岐して小竹向原に乗り入れる西武池袋線(西武有楽町線を経由)と、曳舟から分岐して押上に乗り入れる東武スカイツリーラインくらいのものである。

 そのため両路線は、直通先で運転見合わせや大きな遅延が発生した場合、連絡線を通る列車が長時間運休になることがある。東武スカイツリーラインの場合、押上駅と隣接するとうきょうスカイツリー駅が同一駅の扱いとなっているため大きな問題はないのだが、西武有楽町線については、直通再開まで新桜台駅に列車が1本も来ないということが生じうる。新桜台駅は連絡線に新設された駅で、直通運転の電車しか通らないからだ。