会社法改正案の問題点とは?会社法改正案の問題点とは? Photo:PIXTA

この秋の臨時国会では、重要案件の一つである会社法の一部を改正する法律案(会社法改正案)が審議入りした。この法案が可決成立し、その内容が実現すれば、日本の経済社会の破壊や日本人の貧困化はますます進むことになりかねない。(室伏政策研究室代表、政策コンサルタント 室伏謙一)

野党が「桜を見る会」追及に熱心な折
重要案件の「会社法改正案」が審議入り

 この秋の臨時国会、閣僚のスキャンダル追及に始まり、今や話題の中心は「桜を見る会」である。拙稿『「悪夢の民主党」へ逆戻りか、立民・国民ら野党“オトモダチ”会派の行方』でも指摘したとおり、立憲民主、国民民主等による野党統一会派は、やはり目立つことがお好きなようで、政策議論そっちのけで「桜を見る会」を巡る安倍首相の疑惑追及に熱を上げている。

 そんな中、今国会の重要案件の一つである会社法の一部を改正する法律案(以下、「会社法改正案」)が審議入りした。

 今回の改正の趣旨は、コーポレートガバナンス改革、企業統治改革の一環であるとされているようであるが、端的に、株主資本主義、金融資本主義のさらなる強化。一部を除き、ほとんどの改正項目がそのためのものと言ってもいいだろう。

 事実、11月19日の衆院法務委員会での法案審議において、「会社は誰のものか」との立憲民主党の落合貴之衆院議員の質問に対して、森法務大臣は「会社は株主のものだ」と答弁している。まさしく、今回の改正は株主のためのものだと言っているようなものだ。

今回の改正の要点
3つの規律の見直し

 さて、今回の改正の要点として、法案の国会提出段階で、法務省は(1)株主総会に関する規律の見直し、(2)取締役等に関する規律の見直し、(3)社債の管理等に関する規律の見直し、の3点を挙げている。

 まず、株主総会に関する規律の見直しについては、株主総会資料の電子提供制度の創設等、一般の株主の利便性の向上にも資するものであり、全面的に問題があるというものではない。

 しかし、コスト削減と効率化という、投資家や投機家のための、投資家・投機家の要請に基づく改正であるという点は否めない。加えて、株主提案権の乱用的行使を制限するための措置については、不当な目的による株主提案を拒絶することができるようになる等、外国人株主・ファンド等による不当な要求を退けることができるようになる前向きの措置のようにみえるが、実際は株主同士の牽制のためのものだと考えた方がしっくりくるだろう。

 そもそも今回の改正でなぜこの項目が入ったのかということに関して、経済界、特に電力業界からの強い要請があったのではないかとの観測も、野党系を中心に永田町では聞こえてくる。

 確かに、比較的大幅な改正が行われる場合に、ドサクサに紛れて本筋とは関係の薄い項目がしらっと入れられるということはありうる。いずれにせよあまり筋の良い話ではないように思われる。