人口の割に上場企業が多ければ
本当に県民所得が高いのか?

連載第12回では、「大企業が多い県で働けば“豊かな生活”が送れるか」という仮説を検証してみた。大企業を多く抱える自治体は、地域経済が潤っている可能性が高い。そうした県に住んで働けば、他の地域で働くよりも収入が多くなり、豊かな暮らしを送れるかもしれないと考えたからだ。

 結果としては、少なくとも県民所得順位が近い県同士の比較においては、1人当たり県民所得の多寡と上場企業の本社数や規模との間には、直截的な因果関係はなさそうだという結論に落ち着いた。むしろ、人口当たりの上場企業の本社数が、1人当たり県民所得に影響を与えていそうだ。

 そこで連載第13回は、前回と少し切り口を変えて、都道府県別の人口を踏まえた上で、県内に本社を置く上場企業の数と、1人当たり県民所得および県民総所得との関係を、さらに掘り下げてみたい。

前回までと同様、「どの自治体に本社を置く会社に就職すれば、より多くの所得が望めるのか?」といった直截的な話にはならないが、地方での就職を考える向きにとって、参考資料の1つになればと思う。

 都道府県別の企業規模と業績を見るための基となるデータは、これまでと同様、「ダイヤモンドD-VISIONシリーズデータベースサービス 役員・管理職情報ファイル」である。ただし、これだけでは県民所得に関するデータが得られないので、総務省の国勢調査の結果や、内閣府発表の資料を活用した。

 早速だが、「都道府県別の1人当たり県民所得」「都道府県別人口」と、この両者から得られる「都道府県別総所得」を見てみる。表1は、2009年度のこの3つの指標を「都道府県別総所得」の順に並べたものである。