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連載経済小説 東京崩壊
【第60回】 2012年8月3日
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高嶋哲夫 [作家]

総理の視察

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第3章

32

 車は青山通りを走っていた。

 総理は身を乗り出して前方を走る車を見た。黒の大型セダンには秘書と国交省の次官、そして警護官が乗っている。さらに背後についてくる車には官房長官と警護官が2人。

 30分前、村津は国交省の次官と一緒にやってきた。

 「これから2時間余り、お時間をいただきたいと思います」

 「それはムリです。あなたと会った後、すぐに閣議が始まります。すでに閣僚の方々が待っておいでです」

 総理に代わって秘書が答えた。

 「現状を考えていただきたい。総理もテレビをご覧になったと思います。かなり緊急を要することになりました」

 総理を見つめる村津の目には、ただごとではない思いがうかがわれる。

 ちょうど総理執務室に来た官房長官と共に、村津に言われるままに外出することになったのだ。こんなことは総理就任以来初めてだった。

 警護官は反対したが、最終的には総理が押しとおしたのだ。車は3台。4名の警護官が同行することで納得させた。

 3台の車は総理官邸を出て六本木に向かった。

 総理と村津の乗った車は他の2台に挟まれるようにして走った。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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