また、あるレズビアンは深夜、発作を起こし、パートナーが病院へ付き添ったが、医療者から「家族ではない」ため、放っておかれた。患者自身は発作で苦しく、「彼女を診察室に入れてほしい」と主張することは無理だったという。付き添ったパートナーは患者の様子もわからず、病院の廊下の長椅子でたたずむしかなかった。パートナーが意識を失ったり、終末期状態になったりした場合はどうなるのか。これは認知症その他、介護の場面でも同様の問題が生じるだろう。

懸念される相続問題
遺言も万能ではない

 そして死を迎えたときも、法的関係にないため相続がなく、せっかく二人で形成した財産を承継することができない場合がある。それに備えるには遺言状の作成が有効だが、とはいえ法定相続人である先方の家族と、受遺者であるパートナーとのあいだに紛争が発生しない保障はない。

 たとえば、パートナーにすべてを遺贈すると遺言書に書いたとしても、親が存命の場合、親には遺産の3分の1に対して遺留分がある。親が遺留分を放棄してくれれば問題はないが、親が子のセクシュアリティを受け入れていなかったり、突然現れた遺言の内容に困惑するなどで放棄に同意せず、あくまで遺留分を請求した場合は、紛争にならざるをえないだろう。

 自宅を主とする3000万円の遺産があったとして、1000万円を遺留分として請求されれば、遺言書があったとしても、せっかくパートナーが残してくれた住宅を処分せざるをえない事態さえある。死んだ本人としては、それこそ化けて出て行きたい思いだろう(きょうだいには遺留分請求権はなく、遺言どおりの執行が可能だが、納得が得られず紛争になる可能性はある)。

 家庭裁判所の審判によって、特定の法定相続人をあらかじめ相続から排除することもできないわけではないが、本人を虐待したなど相応の理由が必要だ。同性パートナーとの関係に家裁が理解をしてくれるかも不明だ。

 死後も、子など承継者がいない同性愛者の場合、お墓を購入することは困難である。購入できたとしても、パートナーといっしょに入れるか、疑問はつきない。

 これらはパートナーがいないシングルのゲイでも、家族や親族ではなく、信頼する友人に任せたり残したりしようとすれば、同じ問題が発生する。逆に言えば、日本では長年の伴侶でも、同性であるかぎり法的には何の関係もない、「友人」と見なされるのがせいぜいなのだ。

 こうした「生き死に」にかかわること以外でも、マネープランやライフプラン全般について、中年を迎えたゲイ一期生たちは現在、さまざまな不安や試行錯誤にさらされている。しかし、通常の意味で家族を持たず、子育てをしない同性愛者にとって、世にあるのは「夫婦・子どもあり」の場合の情報ばかり。一人で迎える老後はどうなるのだろう、孤立死は自分の問題かも……。その思いはますます切実になっている。