いまの法律や制度で
できることはある

 では、現在の法律や制度はどうなっているのか、そこでなにができるのか。同性婚が日本でも認められるようになればいい――。そう思う人もいるかもしれない。しかし、欧米と違ってなかなか日本では実現しないだろうし、そもそも日本の同性愛者にそうしたニーズがあるのかも、不明だ。

 そこで、筆者はこれまでの取材と多くの当事者へのインタビューと対話を通して、3つの書面を作成することを提起している。現代は自己決定が尊重される。あらかじめ本人の意思が(書面として)表明されていれば、第三者がそれをもとに対応してくれる可能性が高いのだ。

 3つの書面とは、「医療における意思表示書」「成年後見契約」「遺言」である。

「医療における意思表示書」は、自分の意識が失われた場合の医療行為の決定などに、パートナーや指定者の意思を最大限尊重してほしいと求めるもの。当然、そこにパートナー等への情報提供や看護権も含まれている。終末期医療やいわゆる「尊厳死」について希望があれば、それも盛り込んでよいだろう。

 医療意思表示書は厚労省の研究班で検討され、政策の流れにも合致したものである。なおこれに先立ち、お互いの連絡先と万一にはこの人に連絡をしてほしい旨を記した「緊急連絡先カード」を持ち合い、外で倒れても救助者等からの連絡を呼び込む工夫も必要だろう。

「成年後見契約」は、自分が認知症などで判断能力が衰えた場合、財産管理等を任せるための後見人をあらかじめ指定しておく制度だ。現在は、家族でも勝手な預金解約や不動産処分などはできず、本人確認が求められる時代。自分の判断能力が衰えたときに、パートナーに「お金の保護者」をお願いしたい場合に活用できる制度だ。判断能力が衰える前でも、成年後見の委任者・受任者として、お互いの関係を準公的なものにする可能性もあるのではないだろうか。

 そして「遺言」だ。法的に有効な遺言の知識は、パートナーへの法定相続がないゲイにとって必須の知識といえる。とはいえ、先述のように親族(法定相続人)と紛争を生じる可能性がないわけではない。そのため、あらかじめ遺言の存在や内容を「そのとき」に関わるであろう人たちへ知らせておくことは必要だろう。

 それができないなら、なぜこうした遺言をするのか、この人とはどういう関係なのか、「思い」をしたためた「付言」をつけておくことが有効だと思われる。さらに、残された(法的には素人である)パートナーの代わりに親族と交渉したり、必要な手続きをとってもらうため、法律・法務の専門家に「遺言執行人」を依頼しておくことも有効だろう(執行人の指定も遺言で可能)。