森嶋は急いで服を着て部屋を飛び出した。

 地下鉄の駅に向かいながら森嶋は携帯電話を出した。

 歩きながらボタンを押していく。

〈かかってくると思ってた。あなたを裏切ったなんて思わないでね。私はジャーナリストの義務として記事を書いた〉

 森嶋が何も話さないうちから理沙が話し始めた。

「政府が発表するべきでした。これでは政府の権威なんてまったくなくなる。僕はあなたを信じてあの場所に連れて――」

〈インターナショナル・リンクが動き出してるの。数日後に会見を開く〉

 森嶋の言葉をさえぎるように理沙が話し始めた。

〈彼らは日本政府が何もしないことに業を煮やしたの〉

「日本と日本国債の格付けを下げるためですか」

〈それしかないでしょ。あなたの魔法が解けたのよ。あなたの政府がぐずぐずしてるうちに〉

「だから理沙さんが魔法を復活させた」

〈そうなればいいんだけど。でも、まだ魔法にかかったかどうかは分からない。しばらく様子を見てるだけかもしれない〉

「いつあの写真を」

〈スパイもどきだなんて思わないで。新聞記者としての常識〉

 背後で理沙の名前を呼ぶ声がする。

〈新しい情報があれば連絡するわ〉

 携帯電話は切れた。

 途中で新聞を買って改めて電車の中で読んだ。周りを見たが、半数以上が同様の記事を読んでいる。

 森嶋は現在、自分の周りで起こっていることを整理しようとした。しかし、それらは複雑に絡み合ってほどけそうになかった。

(つづく)

※本連載の内容は、すべてフィクションです。
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