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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

アメリカの金融危機が日本のように「失われた15年」になることはない

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第14回】 2009年1月8日
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 シリコンバレーで行きつけの日本料理屋の客が減った様子はない。クリスマス商戦はどこも大賑わい。アマゾンのネット通販は前年比伸びている。ガソリン価格が大きく値下がりし、ほっと一安心である。金融危機と騒がれながら、生活のどこが変わったのだろうか。

 変わった部分もある。日本料理屋に同じ頻度で来ても以前より安いものを注文する。買い物をするにも、高級品は買わなくなった。嗜好品は容器を小さくして買いやすい価格にしたものを買う。値引き幅が50-70%と大きいバーゲン商品を選ぶ。さらに値引きがありそうな商品は買い控える。こういうご時世でも、財布のひもをちょっと締めながら、貪欲に生活を楽しむのである。

 住宅価格は全国レベルで大幅に下落している。シリコンバレーでも周辺部分の住宅地では確かに落ちている。だが、中心部ではその実感はない。銀行抵当物件の安売りもない。2001年にシリコンバレーを直撃したインターネット・バブルの破裂に比べれば、今回の不況なぞ比べるべくもない。レイオフもあるが、新規雇用もある。ITもバイオもエネルギーも次世代を担う産業として引き続き大きな期待を集めている。

米エコノミストたちは
意外に早い景気回復を予測

 日本ではアメリカの金融危機をどう見ているのであろうか。日本は90年代に不動産バブルが破裂して、「失われた15年」に突入した。アメリカの不況は長期間続くと見る意見が多いように思う。ではアメリカも日本と同じように「失われた15年」に突入するのだろうか。

 日本の不動産バブルは、ゴルフ場開発、遠隔地の高級リゾート開発等、どうしようもないような案件に巨大な金が流れていた。景気回復で簡単に盛り返すとは思えないようなプロジェクトに銀行が巨額資金を貸し出したのである。アメリカの場合は違う。小口の住宅ローンである。価格調整が進めば、再び市場価値のある不動産物件として取引されうる物件である。マクロ経済の回復で解決される問題なのである。

 アメリカでは最近まで「V字型の景気急回復が可能か」が議論されていた。リーマン・ブラザーズが倒産してからは、さすがにこうした議論は影をひそめたが、長期不況にはしたくない気持ちは強い。ウォール・ストリート・ジャーナル紙が54人のエコノミストに「不況脱出の時期」を聞き取り調査したところ、予想の平均値は「2009年4-6月が底で、7-9月から回復する」との結果がでた。意外に早い回復を予想しているのである。

 それでも今回の不況は1930年の大恐慌以来最長の不況になる可能性が高いと口々にいう。今回の不況の始まりは2007年12月であるから、仮に不況が2009年6月まで続いたとすると19ヵ月になる。戦後のアメリカの不況は長くても16ヵ月だった。1973年11月から75年3月までの16か月、81年7月から82年11月まで16ヵ月と2回あった。これがこの国の最も長いリセッションであった。

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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ


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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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