どんな機能があったらいい?は
良いコンセプトを生む質問ではない

もう1つ、大事なポイントがあります。

企画を考えているとき、普通はこんな質問をしたり、されたりするでしょう。

「新しいゲーム機ってさ、どんな機能がついてたら良いと思う?」

この質問自体が、すでに「既知の良さ」を訊ねている点に注目してください。ビジョンを訊ねている質問ではありますが、その答えとして求めているのは、みんなが良いと直感的に感じられるもの……すなわち「既知の良さ」である点が、大きな問題です。

一方、「鍋」というビジョンは、容易に否定されるビジョンでした。むしろ夢想的で、現実味が薄く、荒唐無稽なビジョンだと断じられても仕方がないほどです。

しかし、もし誰かに否定されたとしても、注意深く「否定された」という現実を観察してみてください。このビジョンは、あなたは「良い」と思っているけれど、他人には直感的に「良い」と理解してもらえなかったからこそ、否定されたわけです。……そう、未知の良さを含んでいる可能性があるんです。

「否定されるビジョンほど価値がある」という価値の逆転現象です。

私たちが求めるべきは、未だユーザーも私たちもが発見できていない未知の良さであって、既知の良さに頼りたくなる気持ちと決別しなければなりません。 あるビジョンに「良い」という形容詞を使えるということは、そのビジョン自体が既知の良さに近づいていることの現れです。

一方、ビジョンに「良い」という言葉を使いにくいと感じたとき、そのビジョンには少なくとも既知の良さはないものの、かわりに未知の良さが眠っているかもしれないと考えられます。

ここからわかることは、簡単に「悪い」と否定されてしまうビジョンほど、実は「未知の良さ」を含んでいる可能性が高いということです。

否定されやすいビジョンは、きっと他の誰かが何度も否定してきたビジョンだといえます。既知の良さにもとづく画一的で保守的な考え方によって私たちが知り得なかった未知の良さが、こっそりとビジョンの中に眠っているかもしれません。

つまり、否定されやすいビジョンほど、未知の価値に近づいているんです。

明日は、世界で3億人が夢中になったWiiの例をあげながら、コンセプトの核心に迫ります。


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