よく「商品を差別化するデザイン」「人と違うものを作る」といった表現がされますが、私はこれらの表現が一種の危険を含んでいると感じています。

デザインで差別化するのではなく、未知の良さを身にまとったコンセプトから生まれたデザインだからこそ、必然的に差別化できている……という状況が正しいはずです。

「人と違うものを意図的に作りにいく」のではなく、「まだ誰もその良さを知らないコンセプトを考えた結果として、人と違う商品やサービスができる」というのが本来のものづくりの姿であるはずです。

ましてや、コンセプトにもとづかない単なる差別化だけでは、世界を良くできるかどうかという重要な命題をほったらかしてしまっていますよね。
つまり、「商品を差別化するデザイン」「人と違うものを作る」といった表現からは、コンセプトの不在しか感じ取れないのです。

未知の良さを発見し、新しい大地を切り開くことこそが、私たちの使命です。そして、ものづくりという冒険において未知の良さを求めたからこそ、結果として差別化されたデザインになった……という順番こそがふさわしいはずです。

逆に言えば、あらゆる仕様検討の場面で、コンセプトにもとづいた仕様を選び取ることができれば、きっとコンセプトはユーザーに伝わります。

散りばめられた無数の仕様の中にたった1つのコンセプトを込めた「良いもの」こそが、ユーザーの心の中へと真っ直ぐに飛び込んでいくのです。

こうして多くの人たちの心をつかんだ 「コンセプト」でさえ、最終的には自ら手放すときがやってきます。

最終回は、「コンセプト」を殺すときについて説明します。


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