前回は、企業と顧客の間に無数の接点を創出する「オムニチャネル」の概要について解説した。あまり実感していないかもしれないが、実は皆さんもすでにオムニチャネルのある生活を経験をしているのだ。現在から少しだけ未来のオムニチャネルな暮らしをフィクション小説風にまとめてみた。主人公はサチ、OLである。サチのとある1日の生活を追ってみよう。

サチ、朝起きて

オムニチャネル時代、<br />私たちの暮らしはこう変わる【前編】

 その日は昨夜の残務から自宅で深夜資料まとめをしていたため、少々寝坊気味。

 慌てて、家を出て駅へ駆け込み、来ている電車に飛び乗った。いつもより15分から20分も遅い電車で、しかもいつもの車両ではなかった。

 サチは、混雑した車内では、もっぱら新しく手に入れたスマホにヘッドセットを差し込みお気に入りの音楽を聴きながら、スマホでいろんな情報を見るのが日課だった。

「サチ! いつもと違う車両だよ」

 とスマホの画面に唐突にポップアップが表示される。

 そうだった。この電車は「スマートトレイン」といって、いろんな情報を提供してくれるのだった。たしかにいつもの車両と違う。ということは、降りる駅では階段の位置が違うということなのだ。

 ポップアップメッセージを確認すると、今日の予定を確認した。

 昨夜、父の正一から、ネットで注文しておいた商品を帰りに店でピックアップして欲しいと頼まれていたことを思い出した。商品はゴルフクラブ関係でサチにはよくわからない。店でこの画面を見せればよいと父は教えてくれた。なんだか2次元バーコードを表示しているだけで何のことかさっぱりわからない。それよりも、大体、店はどこにあるのかわからない。

 ゴルフ店を検索しようとしたら、突然SMSが届いた、友人の加奈子からだ。いや加奈子からではなく、加奈子が口コミした内容が送られてきた。