ドル円が80円付近から底堅い動きを見せるようになるのは秋からだろう。米金融緩和下のドル円は、米中期金利の動向に沿って動く傾向がある。米中期金利は数年先までの景気や金融政策の行方を織り込むシグナル。米中期金利が上向くには、まず米経済成長が巡航ペースの2.5%以上を持続する必要がある。また欧州債務問題の懸念が強ければ、米経済にとっても暗雲となり、米金利の先高観は生じにくい。

 米経済指標の改善は、過去2年のパターンからすると、秋以降だろう。2008年秋のリーマンショック後数カ月間の劇的な景気悪化は、翌年以降の同時期の米指標を季節調整という統計処理によって強めに補正させ、そして09年春から夏の果敢な政策発動による景気の急反発は、翌年以降の同時期の米指標を弱めに補正させた。今年も3月まで毎月20万人以上増加した雇用が4月以降10万人未満に鈍化するなど、このパターンを繰り返している。

 したがって10~12月には米指標が上向き、景況感が改善し、11月の米大統領選挙、年末前後に期限を迎える減税など景気支援措置の継続の行方を見守ることになろう。米当局は、欧州と異なり、明らかな景気の下方リスクがあるとき、みすみす見過ごさない。米指標が改善し、減税の継続が決まれば、景況感は上向き、中期金利の上昇、ドル円の堅調につながろう。

 欧州情勢は悩ましい。日米のバランスシート調整の経緯から考えると、ユーロ圏の調整は今後10年単位で続くだろう。その間、南欧諸国や金融機関の資金繰り問題が折々に浮上するが、利害の異なる国々の合議による政策決定は後手に回りがちだ。市場は先行き不安からユーロを売り、それで危機感が募ると政策対応に積極的になり、ユーロ売りの巻き戻しが起こる、その繰り返しである。