「人生はお金の使い方と時間の使い方で決まる」――これは貧窮から起業して成功した、ある若手経営者の言葉だが、「お金の使い方」は別に譲るとして、「時間の使い方」はビジネスパーソンの仕事の成否に大きな比重を占めるテーマだろう。陰山氏は、基本的な生活習慣と「読み書き計算」の徹底反復で学力を伸ばす「陰山メソッド」を提唱、このメソッドを大人のために応用した手帳をつくった。

 子どもたちを伸ばすための絶対的な条件は、「早寝早起き朝ごはん」である。山陽小野田市のプロジェクトをはじめとするここ数年の実践の中で、それは知能指数の大幅アップという形で実証された。僕が、「週刊ダイヤモンド」の連載コラムの中で、繰り返し「残業をやめて家に帰ろう」と呼びかけてきたのは、子どもの生活を朝型に変えるには、家庭が変わらなくてはならない。家庭が変わるには、企業や社会が変わらなくてはならない、と考えるからだ。

 さらに言えば、「早寝早起き朝ごはん」で元気になれるのはなにも子どもばかりではない。お父さんお母さんのパワーも確実にアップする。大人の知能指数が上がるというデータは残念ながらないが、脳に栄養が行き渡れば、頭の回転が良くなり、仕事の能率が上がることは確かだ。つまり「早寝早起き朝ごはん」は単なる教育的な配慮ではなく、人間としてのマンパワーを最大限に発揮させる方法なのだ。

 いい仕事をしたいと思ったとき、一番大切なことは何か。それは時間のマネジメントであると僕は思っている。お金は貸し借りができるし、人は代理を立てることができる、だが、時間だけはどうにも融通がきかない。だからこそ、だれにも等しく与えられた1日24時間をどう管理するかは、マネジメントの基本にもなってくるし、仕事ばかりでなく、生き方そのものであるとも言えるだろう。

 早く寝て早く起きる、だいたい決まった時間に食事をとる、集中力が高まるように仕事を組む、上手に休憩を挟む、完全に仕事を離れた余暇時間を設ける……これらを実践するためには、時間をコントロールする以外に道はない。能力を発揮できる生活スタイルを確立するためには、時間をマネジメントできなくてはならないのだ。