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連載経済小説 東京崩壊
【第63回】 2012年8月10日
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高嶋哲夫 [作家]

総理の緊急放送

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第3章

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 総理執務室は異様な空気が支配していた。緊張と困惑、そして疑惑といら立ちの入り交じったものだ。

 総理は新聞を手にすでに10分以上も動かない。

 横で官房長官と3人の秘書が無言で見つめている。

 今朝、秘書からの電話で5時前に起こされた。

 寝巻のまま執務室にいって、渡された新聞を見て全身が凍りついた。

 新首都模型の写真が載っているのだ。写真のアングルは決していいとは言えないが、村津に連れられて行った設計事務所で見たモノに間違いなかった。わずかに写っている背景にも見覚えがある。

 記事には首都移転準備室が設立され、廃止された経緯と、新たに首都移転チームが立ち上げられたことが書かれていた。その記事自体には真新しいものはなかったが、〈政府、首都移転を計画〉という見出し自体に強いインパクトがあった。

 さらに隠し撮りを臭わせる写真が、その信憑性を後押ししている。

 隣室から秘書が受話器を持って現われた。

 「東京都知事からお電話です。お出になりますか」

 総理は一瞬迷った。どう説明すればいいか考えがまとまらない。しかし、何を言っても納得はしないだろう。それは午前5時すぎの電話という行為が物語っている。

 総理は受話器を持って来るよう指示した。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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