第3章

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 総理執務室は異様な空気が支配していた。緊張と困惑、そして疑惑といら立ちの入り交じったものだ。

 総理は新聞を手にすでに10分以上も動かない。

 横で官房長官と3人の秘書が無言で見つめている。

 今朝、秘書からの電話で5時前に起こされた。

 寝巻のまま執務室にいって、渡された新聞を見て全身が凍りついた。

 新首都模型の写真が載っているのだ。写真のアングルは決していいとは言えないが、村津に連れられて行った設計事務所で見たモノに間違いなかった。わずかに写っている背景にも見覚えがある。

 記事には首都移転準備室が設立され、廃止された経緯と、新たに首都移転チームが立ち上げられたことが書かれていた。その記事自体には真新しいものはなかったが、〈政府、首都移転を計画〉という見出し自体に強いインパクトがあった。

 さらに隠し撮りを臭わせる写真が、その信憑性を後押ししている。

 隣室から秘書が受話器を持って現われた。

「東京都知事からお電話です。お出になりますか」

 総理は一瞬迷った。どう説明すればいいか考えがまとまらない。しかし、何を言っても納得はしないだろう。それは午前5時すぎの電話という行為が物語っている。

 総理は受話器を持って来るよう指示した。