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岸博幸のクリエイティブ国富論

オバマ大統領誕生の熱狂が示す日米の“危機感”格差

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第24回】 2009年1月23日
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 仕事で一週間弱米国に滞在し、オバマ氏の大統領就任の日をニューヨークで過ごしたため、米国民の熱狂を直接垣間見ることが出来ました。

 そこで強く感じたのは、日米間での危機感と問題意識の差です。日本のメディア/有識者や野党は、官僚叩きや一部の非正規雇用者の惨状など、ワイドショー的なテーマに血道を上げ過ぎではないでしょうか。この危機感のなさが続いたら、数年後には米国に大きな差をつけられるとニューヨークで痛感しました。

オバマ大統領誕生の熱狂

 それにしても、オバマ大統領就任の日の熱狂は凄かったです。日本ではワシントンの光景ばかりが報道されたと思いますが、それが全てではありません。私は好奇心もあり、ニューヨークのハーレム(黒人街)にある有名劇場アポロ・シアターにオバマ大統領の就任演説の中継を見に行きましたが、超満員の黒人達が演説の最中に何度も凄まじい拍手をして、演説が終わるとスタンディングオベーションをしている様は圧巻でした。

 また、その日の夜はニューヨークでも最高級のレストランで食事をしましたが、そこにいる金持ちの白人達と話すと、皆一様にオバマ大統領の誕生を歓迎していました。貧しい黒人も金持ちの白人も、皆が米国の新たな船出を心底喜んでいるのです。

 米国がそのようにオバマ大統領に熱狂するのは、国内要因(金融危機と景気悪化)と海外要因(イラク戦争やテロの危機)から米国を覆っている閉塞感をオバマ大統領が打破してくれるのでは、という期待感からです。逆に言えば、米国の現状に対して各層が大きな危機感と問題意識を抱いているのです。それを反映してか、米国のマスメディアや有識者は、経済政策や外交政策の方向性や中身について正しい議論や主張を行っています。米国滞在中に新聞やテレビのニュースを見ていて、米国内の論調の健全さがつくづくうらやましくなりました。

 翻って今の日本はどうでしょうか。既に昨年の早い段階から、日本の景気は米国よりも早く悪化していました。株価の下落率を見ても、昨年10月の金融危機までは日本の方が米国より大きかったのです。金融危機を境に米国経済が急速に悪化しているとは言え、日本の景気も更に悪くなっています。そう、本当は日本も米国と同じレベルの危機感を持って然るべきなのです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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