株式レポート
8月8日 18時0分
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政治の迷走と日本売り懸念(2)〜金利の急上昇リスク?〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・本日(8月8日)の日経新聞「政局で金利急上昇懸念」の中で、昨日(7日)の日本の債券市場では10年金利が0.78%に上昇したことが取り上げられている。1日の上昇幅だと今年度最大になったことを受けて、先行きの金利上昇が「懸念される」とされている。なお、昨晩(7日)の米国市場での株式と長期金利上昇をうけて、本日も10年金利は0.8%台まで上昇している(11時半現在)。

・記事の中では、「金利の急上昇」が続くリスクとして、先週末から日本の政局で不透明感が高まり、規定路線と思われた消費増税法案が、予定通り成立しない可能性が高まったことが挙げられている。「法案が廃案になれば日本国債の格下げにもつながり、さらなる金利上昇も見込まれる」という観測である。

・「一寸先は闇」の政治がどう展開するかは分からない。2010年夏にマニュフェスト堅持などを掲げた小沢氏が民主党代表選挙に出馬した時に、「小沢ショック」と呼ばれた金利上昇が起きたため、ごく短期的にみれば、そうした場面を意識する市場心理があるというのは理解できる(グラフ参照)。


・ただ、2011年半ばから世界的な国債金利低下が続き、これまで日本の国債金利も歴史的な低水準に押し下げられてきたわけで、外部環境が変われば、現在の極めて低い金利環境は容易に変わりうる。長期的な現在の金利水準を考えれば(6月1日レポート参照)、今週起きている程度の金利上昇が、「懸念すべき急上昇」なのか冷静に考える必要があるだろう。

・また、7月4日レポートでも述べたが、2007年から毎年のように首相が変わり、2009年に「消費税について議論しない」という民主党政権が誕生し、その後財政赤字が拡大し続けても、金利低下(と円高)がずっと続いたのが現実である。つまり、「日本売り」が起きているのは、為替・債券市場ではなく、株式市場においてである。日本の政局動向によって、「今度こそ」日本売りが広範囲に起きる確かな理由を、少なくとも筆者は聞いたことがない。

・そして、日経の記事には以下のような、興味深い市場関係者の思惑が紹介されていた。「日銀が国債を積極的に買い入れてきた前提には政府が財政再建に向け力を尽くすという暗黙の約束がある。前提が覆れば、中銀による国の借金の肩代わりと受け取られることを恐れて日銀が緩和路線を転換しかねない」。日銀の金融緩和策が変わり、長期金利が上昇するリスクがあるとのことだ。

・日銀は、2月に掲げたインフレ目標の達成のために、独立した判断で政策を行っているはずである。政府の財政政策が変われば、日銀による金融緩和策が変更されるのだろうか?日銀の公式見解では、「政府が財政再建を目指しているから、金融緩和を強化している」という説明はないはずだが、こうした通常の筆者の理解からすれば驚きの発想である。

・仮にこの思惑が正しいなら、日銀による金融政策は、景気安定・脱デフレのために行われているのではなく、政府による財政政策を支援するためだけに存在していることになる。日銀は、重要な使命である経済安定化策において自らの判断を放棄しているというわけだ。世界で「金融緩和競争」の色合いが強まる中で、「これが現実だから、日本でデフレがいつまでも続いている」と考えたくはないが、どうなのだろうか?


(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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