10月24日から28日にかけて株価は26年ぶりの安値に沈み、為替は13年ぶりの円高ドル安をつけ、日本のマーケットは騒然とした。その後は値を戻しているものの、日本経済を蝕む「株暴落・円急騰危機」再来の恐怖はくすぶり続けている。

 日経平均株価は10月28日の場中に1982年以来の安値6994円90銭を付けた後、盛り返している。円相場もまた24日に95年以来の1ドル90円82銭まで急騰した後、29日には100円近くまで切り返した。

 「米欧金融危機に改善の兆しが見え始めたかなと思ったところに、通貨危機と実態経済悪化が束になって襲いかかってきた」(投資信託会社幹部)ことで、パニックに見舞われた市場はここにきて一見、平静さを取り戻したかに見える。

 だが、安堵している市場関係者は見当たらない。「今も耳元で『明日また何が起こるかわからない』と警報が鳴り続けている状態」(国内投資信託運用担当)、「株式市場は先物主導でぐちゃぐちゃ。現物株の商いを伴わずに値が飛んでいる。現物株を買える状況ではない」(国内ヘッジファンド)と、警戒態勢を解いていない。

 無理もない。スパイラル的な株暴落・円急騰劇を引き起こした“元凶”に歯止めがかかってはいないのである。世界的なリスク資産圧縮、投資資金引き揚げの動きだ。

 その荒波を真っ先にかぶったのがヘッジファンドだ。実際、解約の動きはすさまじい。中小ファンドが散発的に清算に追い込まれている。日本のヘッジファンドマネジャーが漏らす。「(顧客の解約を受けて)資産を現金化できればまだマシなほう。株やREITを売るに売れず、現金化さえできない瀕死のファンドが少なくない」。

 金融危機の度合いがより深刻な欧米においては、株などリスク資産からの逃避、資金引き揚げの動きはなおのこと強烈だ。

市場で猛威を振るう
投資資金の引き揚げ

 これらが次ページのグラフのとおり、世界各国の株価をメルトダウンさせ、原油などの商品相場を押し下げ、新興国通貨を軒並み下落させる大きな要因となっている。

 国際通貨基金から緊急融資を仰ぐアイスランドとハンガリー、それにポーランド、南アフリカ共和国、トルコなどの通貨はここ4ヵ月で約3割もの下落に喘ぐ。新たな危機の火種がばらまかれている格好だ。

 こうした世界的なマネー逆流の真っただ中に、日本株も円もいる。