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連載経済小説 東京崩壊
【第64回】 2012年8月17日
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高嶋哲夫 [作家]

新しい日本の未来

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第4章

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 総理の発表演説は30分で終わった。

 日本ではこういったスピーチは異例だった。

 「マスコミとの会見はやはり中止したほうが賢明かと思われます。あまりに突然なことなので、どのような質問が出るか分かりません。もっと準備してからのほうがいいかと」

 各テレビ局のクルーたちが別室に移った後、官房長官が言った。

 「村津君はどう思うかね」

 「どうせ、いつかはやらなければならないことです。それなら、早いほうがいいかと。準備不足はマスコミも同様です」

 「きみも一緒に出てもらおう。どうせ私は詳しいことには答えられない。政治的な手続きについての質問だけならなんとかなるだろうが、なぜあの模型なのか、これからの具体的な進展などについてはまったくの門外漢だったからな」

 「申し訳ありません。このように急激に進むとは思ってもいませんでした」

 総理の皮肉を込めた言葉に村津は答えた。

 総理の発表演説とマスコミとの会見により、日本の首都移転計画はその日のうちに日本はもとより、世界に広まった。

 午後には、東京都側から断固反対の意思表示があった。

 都議会議員127名のうち、125名の署名が届けられたのだ。署名しなかった2名のうち1人は病気入院中であり、もう1人は遅刻したらしい。

 衆参両院の議員たちからも、半数以上の反対の声が上がっていると報告があった。

 「この状態で法案を通すことは不可能に近い。私が説明して、納得してもらうしかないな」

 「現状を考えると、そんな生易しいことでは収拾しないでしょう」

 官房長官の言葉に総理は考え込んだ。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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