「取り立て屋」さながらに生活保護費を召し上げる自治体の変質ぶり生活保護費の不正受給は問題だが、自治体のケースワーカーが自分の担当する受給者に対して不法行為を行う例もある(写真はイメージです) Photo:PIXTA

生活保護費の不正受給は問題だが
どこに向けた対策か

 国であれ地方であれ、政府は強力な権限を持っている。行政は常に、「全員が賛成しているわけでも納得しているわけでもない」という状況下で、何かを行わなくてはならない。

役所の仕事の1つは、納税したくない億万長者や、建築基準法違反のタワーマンションを建てたいディベロッパーや、生活保護も利用したい年収1000万円超の守銭奴に対して、毅然と「ダメです」と言うことだ。「ダメ」の根拠は、法律・省令・条例・通知・通達などに示されている。

 特に生活保護の世界では、毅然たる「ダメ」を貫くために、長年にわたって注意が払われてきた。生活保護の対象になれば、医療サービスなどを含めて、1人あたり年間約200万円の給付を受けることができる。他人に生活保護を利用してもらって上前をハネる貧困ビジネスも、なかなか美味しい商売だ。

 資金難ではあるけれど愛人を囲っておきたい社長は、愛人に生活保護を受けさせれば、小遣いやプレゼントや旅行の費用だけで維持できる。行政としては、そういう不適切な生活保護の使い方をさせず、生活保護を必要とする人に確実に提供する必要がある。少なくとも、名目上はそういうことになっている。

 もちろん、名目だけではない。不正受給対策は実際に行われ、その体制は年々強化され、今や多くの福祉事務所に警察OBが配置されている。不正受給の対策に関連する費用は、人件費だけでも膨大な金額になるだろう。

 しかし、もしもケースワーカーが自分の担当する生活保護受給者に対して不法行為を行っており、「不法行為を受け入れなくては保護費を渡さない」と迫り続けているようなことがあれば、そのケースワーカー自身や福祉事務所の「不正受給対策」を信用するわけにはいかないだろう。そして、それは「もしも」ではなく、筆者が約30年にわたって居住している東京都杉並区で実際に起こった出来事だ。