株式レポート
8月14日 11時2分
マネックス証券

第21回 「地の利」(2) - 広木隆の「投資の潮流」

前回は勝負事には「地の利」というものがある一方、その反対に地元勢がまったく活躍できない「ウィンブルドン現象」もあることを書いた。「ウィンブルドン現象」とは、国内市場を開放し自由競争を促した結果、外国企業に国内の企業が淘汰されること。テニスの全英オープン、ウィンブルドン選手権で、世界の強豪選手が集まり覇を競う一方、地元選手が勝てなくなったことに由来する。1980年代に英国ではサッチャー政権による「ビッグバン」と呼ばれる金融の規制緩和が進み、米国や大陸欧州の外資系金融機関がロンドンの金融街シティーに進出した。シティーは活性化し金融は英国の主力産業として復権を遂げたが、英国の地場証券が生き残る場所はそこにはなかったのである。

日本の状況はどうだろう。大相撲の番付は外国人力士に上位を占められることが常態化して久しいが、金融市場はというと、外資の参入は進んでいない。いや、進んでいないというのは言い過ぎだが、投資銀行業務を見た場合、国内金融機関の寡占とも言える状況が続き、外資が国内金融機関の牙城を切り崩せていないのだ。先日の日経新聞の記事によると、2012年上期の投資銀行業務における国内大手のシェアは65%。海外ではこれほど現地金融機関のシェアは高くなく、世界的にみて日本の寡占度の高さは際立っている。1996年、第2次橋本内閣が提唱した「日本版ビッグバン」が目指したものは、東京市場をニューヨークやロンドンのような国際市場に、そしてアジアの金融センターにしよう、というものであったが、残念ながら成果は乏しい。その理由は様々あるだろうが、国内企業と国内金融機関の結びつきは依然として強固なまま。「日本の商慣習」や「言葉の壁」がもしも理由の一部ならば、ある意味、日本の金融機関は「地の利」を活かしていると言えるかもしれない。

ところが、これは企業の増資引き受けといった、いわゆる「プライマリー」の証券業務の話だ。市場での売買、いわゆる「セカンダリー・マーケット」では状況は一変する。例えば、個人投資家の売買注文は大半が手数料の安いインターネット経由になっている。オンライン証券は外資系ではないが、既存の大手金融機関の牙城が崩れたという意味では日本版ビッグバンの成果のひとつである。

売買の主体を見ると、一見「ウィンブルドン現象」が起きているように見える。なぜなら、いまや東証の売買代金に占める海外投資家の比率は6~7割にも達するからだ。個別企業の情報や売買発注の時差などを考えれば、本来、株式投資の世界こそ、日本にいて日本語で多くの情報が入手できる日本の投資家が最も「地の利」が活かせそうな分野ではないか。

これには実は裏がある。昔、資本市場では「黒目」「青目」という言葉があった。債券の発行体を表す業界用語で、「黒目」は日本企業、「青目」が外国企業を指した。「茶目」というのもあって、これは「○○インターナショナル・ファイナンス・ロンドン」みたいな日本企業の現地法人を指した。外国企業なのだけど中身は日系、というわけだ。日本株の投資主体別に表れる「海外投資家」というのもこの「茶目」に近いケースが少なくない。例えば、最大手の外資系運用会社。外国人ファンドマネージャーがボトムアップで日本企業を調査する。但し、彼らは外国人であっても日本語がペラペラだ。厳選した銘柄をポートフォリオに組み入れる際の売買注文は香港にあるトレーディング・チームからの発注になる。日本にいるファンドマネージャーが意思決定した投資行動でも、「海外投資家」の注文としてカウントされることになる。ヘッジファンドで日本国内では「投資助言」のライセンスしかもっていないケースも同様だ。シンガポールなどに作られたトレーディング・エージェントに「助言」を送り、現地から発注させる。これも「海外投資家」の注文となる。日本を飛び出して香港やシンガポールでヘッジファンドを運用する日本人ファンドマネージャーも多い。日本人だが統計上は「外国人」投資家となる。

統計上は「日本株の売買は外国人が主体」だが、こうした事情を割り引いて考える必要があるだろう。言葉(情報)の問題、時差の問題を考えれば、まったく日本から離れて日本株投資は成り立たない。証券業務の一部では、日本に残る特殊性のため外資のシェアが上がらないのに、投資においては外国人が市場を席巻するというのも、よく考えればおかしなことではないか。




(チーフ・ストラテジスト 広木隆)

■ご留意いただきたい事項
マネックス証券(以下当社)は、本レポートの内容につきその正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。当社が有価証券の価格の上昇又は下落について断定的判断を提供することはありません。
本レポートに掲載される内容は、コメント執筆時における筆者の見解・予測であり、当社の意見や予測をあらわすものではありません。また、提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。
当画面でご案内している内容は、当社でお取扱している商品・サービス等に関連する場合がありますが、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。
当社は本レポートの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
本レポートの内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することはできません。当社でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動・金利の変動・為替の変動等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。また、発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
なお、各商品毎の手数料等およびリスクなどの重要事項については、マネックス証券のウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」(※)をよくお読みいただき、銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身のご判断で行ってください。
((※)http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G2004/risk/index.htm)

■利益相反に関する開示事項
当社は、契約に基づき、オリジナルレポートの提供を継続的に行うことに対する対価を契約先金融機関より包括的に得ておりますが、本レポートに対して個別に対価を得ているものではありません。レポート対象企業の選定は当社が独自の判断に基づき行っているものであり、契約先金融機関を含む第三者からの指定は一切受けておりません。レポート執筆者、並びに当社と本レポートの対象会社との間には、利益相反の関係はありません。

(マネックス証券)


マネックス証券
株式売買手数料(指値) 口座開設
10万円 30万円 50万円
100円 250円 450円
【マネックス証券のメリット】
日本株投資に役立つ「決算&業績予想」、信用取引ではリスク管理に役立つ信用取引自動決済発注サービス「みまもるくん」が便利。米国株は最低手数料5ドル(税抜)からお手軽に投資が可能で、米国ETFを通じて世界中に分散投資できる。投資先の調査、リスク管理、リスク分散など、じっくり腰をすえた大人の投資ができる証券会社と言えるだろう。一方、短期・中期のトレードに役立つツールもそろっている。逆指値ほか多彩な注文方法が利用できる上に、板発注が可能な高機能無料ツール「新マネックストレーダー」が進化中だ。日本株、米国株、先物取引についてロボットの投資判断を日々配信する「マネックスシグナル」も提供しており、スイングトレードに役立つ。
【関連記事】
◆AKB48の4人が株式投資とNISAにチャレンジ!「株」&「投資信託」で資産倍増を目指せ!~第1回 証券会社を選ぼう~

◆マネックス証券おすすめのポイントはココだ!~日本株手数料の低さ、ユニークな投資ツールが充実しているネット証券大手
マネックス証券の口座開設はこちら!

株主優待名人の桐谷さんお墨付きのネット証券!最新情報はコチラ!
ネット証券口座人気ランキングはコチラ!
NISA口座を徹底比較!はコチラ
株主優待おすすめ情報はコチラ!
優待名人・桐谷さんの株主優待情報はコチラ!
 

Special topics pr

Apple Pay対応のクレジットカードで選ぶ! Apple Payに登録して得する高還元率カードはコレ! [クレジットカード・オブ・ザ・イヤー2016]2人の専門家が最優秀クレジットカードを決定! 2016年版、クレジットカードのおすすめはコレ! その 【株主優待】最新の株主優待情報更新中! おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ランキング
1カ月
1週間
24時間
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

17年の日本株講座
株主優待ベスト136
注目ふるさと納税64

1月号11月21日発売
定価730円(税込)
◆購入はコチラ!

Amazonで「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!

【266名様に当たる!株主優待品大プレゼント】
特大付録ふるさと納税駆け込み特産品64
2017年儲けるため日本株講座
・発表!高配当株超成長株の本命株ベスト20
・権利確定月別!株主優待ランキング136!
最高16%超優待&配当利回りベスト30
10万円以下も42!少額で買える優待株30
桐谷さんほか優待投資家15の優待満喫生活
少額でも勝てる本格上昇目前3万円株10
・読者の保有投信&ポートフォリオ激辛診断
NISAの枠を使い切るベスト投信22&株12
・トランプでどうなる米国株&買いの8銘柄
・今後3カ月間日本株&為替の透視図
・勝谷誠彦の1000万円株投資日記
AKB48 in NISA株&投信ファイト
・マンガ「恋する株式相場!」
・マンガ・「60~65歳の年金空白期の埋め方」
付録「1万円からできるラップ口座大解剖」

「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!

>>「最新号蔵出し記事」はこちら!

>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

おすすめクレジットカード!ANAカードでマイルを貯める裏ワザとは? 堀江貴文や橘玲など人気の著者のメルマガ配信開始! クレジットカードに関するクチコミ情報大募集中!