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企業を助け、財テクとして高利を産む
中国で広がる「民間金融」の実態

“中国版・金持ち父さん”段紹譯氏インタビュー

姫田小夏 [ジャーナリスト]
【第28回】 2009年6月25日
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経験はあっても創業できず、アイディアがあっても商品化できない――。中国にも金を借りられない中小企業(*1)の経営者はゴマンといる。これら中小企業にとって、ノンバンクである「民間借貸(以下、民間金融)」(*2)は重要な資金調達の手段だ。“地下銀行”とも呼ばれるしくみは、いわば日本の高利貸に近い業態だが、中国人民銀行は「融資構造を調和するもの」「中小企業、“三農”(*3)の資金的困難を改善するもの」とし、近年、積極的な評価を与えるようになった。このほど、富士通総研の招聘で段紹譯氏が来日。“中国版・金持ち父さん、貧乏父さん”を副題に持つ「普通百姓 致富之路」の執筆で注目を集める段氏が、独自の理論をもとに「民間借貸」について語った。

中国では一般の庶民も虎視眈々とお金を増やすチャンスを探している。が、彼らの多くは株好きであり、不動産好きで、結局、その“財テク”は実を結んでいない。一方で、段氏は庶民が財を成すためには「民間融資」も選択の1つだと主張。段氏に学ぶ学生らには、「年利12%前後で資金を集め、年利18~24%で貸付ける」という方法を教えている。

――段さんが捉える民間融資は投資法の1つなのですね。

段氏 「民間金融」はいわゆる高利貸のようなものですが、利息だけを目当てにした暗いイメージの業態とは異なります。私が提唱しているのは、「人をも利し、自分をも利する」という一種の投資法で、「もっとたくさんお金を稼ぎ出す人に貸す」という発想に基づいたものです。

 「借鶏生蛋」(鶏を借りてきてタマゴを生ませる)と言う言葉がありますが、借りた鶏にタマゴ100個を生ませて、50個の利息を付けて貸主に返しても、自分の手元にはまだ50個のタマゴが残る。貸主もハッピー、借主もハッピーですね。でも、そもそも借りてこなければタマゴ50個すら手に入れることはできません。飼育上手な人に貸せばなおのこと、通常20個しか生まない鶏でも、50個を生ませてくれるでしょう。貸主は自分で生ませるよりも30個も余計にもらえます。しかも、いちいち自分で餌を与える手間も省けるわけで……。これを傍観している手はありません。

――実に前向きな高利貸ですね。

段氏 私や私の友人らは、この民間金融ですでに多くの創業者や企業家を育て、富裕にさせてきました。「資金不足に悩む人を助けながら、新たな儲けの道を見つける」というこの投資法の根底には、私の師である茅于軾先生(*4)の哲学と経済学に基づいた「自分も利し、他人も利する」という理念があります。

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(*1)中小企業:中国における中小企業の定義は、工業、建設業、卸・小売業など分野ごとに異なる。工業分野では従業員2000人以下、年間売上高3億元以下を中小企業、また、従業員300人以上、年間売上高3000万元以上を中型企業、それ以下を小型企業としている。一方、段氏の融資対象は広範な民営企業であり、理髪店などの自営業者も含んでいる。
(*2) 「民間借貸(民間金融)」:消費者間、あるいは消費者と法人、消費者とその他組織の間で行われる金の貸し借り。投資の1つでもあり、銀行融資を得られない中小企業や庶民の間で発展した。「最高人民法院関于人民法院審理借貸案件的若干意見」の規定により合法性が確保された。利率は中国人民銀行(中央銀行)の基準利率の4倍を超えてはならないとされている。
(*3)三農:農業、農村、農民の3つの問題を指す。
(*4)茅于軾:93年中国社会科学院を退職後、非営利かつ独立系かつ北京天則経済研究所を設立。現在同研究所において理事長を務める。良心ある経済学者として知られ、「経済学界の魯迅」と呼ばれている。同氏は今年6月、富士通総研の招聘で来日。「中国の構造調整の対象として比較的着手しやすいのが金融改革。民間企業や農村など富の分配から見放された、いわゆる格差の底辺にいかにして資金をもたらすかが課題」とコメントしている。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国・アジアビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。語学留学を経て、上海財経大学公共経済管理学院に入学、土地資源管理を専攻。2014年卒業、公共管理修士。「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、共著に『バングラデシュ成長企業 バングラデシュ企業と経営者の素顔』(カナリアコミュニケーションズ)。

 


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90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

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