政府は7日、ようやく2009年度第2次補正予算に盛り込む「緊急経済対策」として、7.2兆円を出資する追加経済対策の修正案を提示し、現在、最終調整を進めている。具体的な対策として、環境分野ではエコポイント・エコカー補助金の延長、住宅版エコポイント制度の導入、その他、中小企業の資金繰り支援枠を10兆円追加するなどを挙げている。しかし、明治大学の高木勝教授は、「こうした対策は自民党政権時代の焼き直しに過ぎず、効果は限定的で、デフレや“二番底”懸念は拭えない」と警鐘を鳴らす。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子、撮影/宇佐見利明)

タイミングを逸した
限定的な追加経済対策

――政府がようやく追加経済対策案を提出したが、このタイミングで提示したことをどう評価するか?

高木勝
たかぎ・まさる/明治大学政治経済学部教授。昭和44年慶應義塾大学経済学部卒、同年富士銀行入行。同行調査部次長を経て昭和63年富士総合研究所経済調査部長、平成5年研究主幹、平成9年同研究所理事就任。平成10年4月明治大学政治経済学部教授・明治大学大学院政治経済学研究科教授、経済評論家となり現在に至る。

 「完全にタイミングを逸した」と言っても過言ではないだろう。

 今年4月から景気は回復し始めているが、現在の日本経済は円高、デフレ、雇用や賃金の悪化といったマイナスの要因が多く、“二番底”と呼ばれる「景気の腰折れ」も懸念されている。今こそ景気回復の維持や、デフレを一刻も早く払拭することが大きな課題だ。

 そういう点から言うと、本来ならば、臨時国会が終わった段階で、対策案を可決・成立させ、動き出さなければならなかった。

 ところが結論は、通常国会に先送りされてしまうのが現実だ。しかも、通常国会の開始は1月22日だといわれている。補正予算なので短期間で国会を通過するとは思うが、すぐ実行に移るわけではない。7.2兆円のうち9割程度の対策が行われるのが4月以降だろう。

 さらに問題なのは、民主党政権が麻生首相時代の第1次補正予算を2.9兆円削減してしまった点である。本来ならば、すでに実行され、ある程度の経済効果を生み出していたはずだ。それを第2次補正の財源としているが、4月以降の実行となれば、半年以上のタイムラグができてしまうことになる。

 マイナスの懸念材料は、鳩山政権が発足した当時から起こっており、待ったなしの状況だったのは明確だ。それなのに、このタイミングになってしまった新政権の罪は大きい。

――7.2兆円という金額を提示しているが、果たして十分なのだろうか?

 非常に限定的で、不十分であると捉えている。しかも、3兆円は地方交付税交付金減額の補填に当てられる。補填したところで、地方自治体にすれば通常通りであって、さらなる景気の悪化を食い止められても、景気を浮揚させる効果はない。

 つまり真水額は4.2兆円ということになる。さらにその内の2.9兆円は第1次補正予算から削減したものを再計上しただけであって、実際は1.3兆円の追加に過ぎない。