政府のエネルギー・環境会議(エネ・環会議)が、2030年の我が国のエネルギー構成について、3つの選択肢を提示して国民から意見を聴取した。「課題先進国」を提唱し、早くからエネルギー問題解決のカギは技術進歩による省エネルギーにあると説いてきた小宮山宏三菱総合研究従理事長は、政府案のエネルギー消費見通しは過大だと指摘する。

政府案はエネルギーの
需要予測に大きな問題

――エネ・環会議から原発依存度が、0%、15%、20~25%の3つのシナリオが示されましたが、この選択肢をどう評価されていますか?

政府案は技術進歩を過小評価<br />家庭の電気代はむしろ減少する<br />――三菱総合研究所 小宮山宏理事長に聞く1972年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了後、東京大学工学部長 等を経て、2005年4月に28代総長に就任。2009年3月に総長退任後、同年 4月に三菱総合研究所理事長、東京大学総長顧問に就任。『地球持続の技術』『「課題先進国」日本』『知識の構造化』『日本「再創造」』など著者多数。

 はっきり言うと、エネルギーの需要予測が大きすぎる。原発依存度は需要に対する割合です。重要なのは稼動させる原発の数であり、発電量でしょう。

 需要予測が過大な理由を僕も関係している科学技術振興機構の低炭素社会戦略センター(LCS)が行った3つの選択肢の解析に基づいて述べたい。日本の将来のエネルギー問題を考える上で、最大のポイントは、省エネルギー=エネルギー消費の効率化をいかに見込むかということです。

 エネ・環会議の3つのシナリオでは、4つの機関が、原発比率が0、15、25~25の3つの案に対して家庭の電気代がいくらになるか、GDP(国内総生産)がどれくらい影響受けるのかについて予測を出している。あの予測に使った基本的なモデルは全部同じで、応用一般均衡モデルというものです。簡単に言うと、価格が上がると需要が減り、その逆だと逆になるという経済原則に則ったものです。