コロナショックによって鉄道各社の経営も大きな影響を受けている。新幹線乗車率は軒並み前年比5割を切り、東京駅や新宿駅などターミナル駅の利用者数も8割減。大手鉄道事業者の減収は避けられない見通しだが、それにも増して厳しいのはJR北海道やJR四国、そして全国の中小私鉄だろう。東京五輪開催に合わせて行われていた新駅開設やホーム移設・改良工事は次々に完成しているが、先の見通せない年度始めとなってしまった。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

新幹線も在来線も
利用者が激減

人通りが少なくなった新宿駅東京駅や新宿駅などのターミナル駅の利用者数も前年比8割減。大手鉄道事業者も影響を免れ得ないが、JR北海道やJR四国、そして地方の中小鉄道事業者はさらに苦しい状況に追い込まれるだろう Photo:EPA/JIJI

 新型コロナウイルスの感染拡大に終息の気配が見えないまま、2020年度が幕を開けた。

 鉄道各社の足元の情勢は厳しい。JR東日本、JR東海、JR西日本では、3月に入ってからの新幹線の乗車率は対前年比5割以下に落ち込んでいる。またJR東日本は、東京都の小池百合子都知事が外出自粛を要請した3月28日、東京駅や新宿駅、上野駅などのターミナル駅の利用者数が対前年比で8割前後、減少したと発表している。

 JR東日本の定期外旅客収入は年間約1兆3000億円なので、仮にこれが半減すると、1カ月当たり約550億円もの減収要因となる。

 新年度に入り定期券の買い替えシーズンを迎えたが、在宅勤務の拡大など通勤スタイルそのものの転換も始まっており、今後の定期旅客収入にも影響を及ぼすだろう。新型コロナウイルスの終息までには数カ月以上を要するとされており、2020年度はJR発足以来最大の減収になることは確実だ。各社の今年度の設備投資計画にも変更が生じる可能性がある。

 今年度の鉄道の大きなトピックスといえば、東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う大会輸送だったが、世界的な感染拡大を受けて、今年度の開催は正式に断念され、来年7月への延期が決定した。

 大会期間中は、夜間工事や定期的に行われている検査を延期して、観客輸送のために深夜2時頃まで運行を継続する計画だったが、これも中止に。現時点では来年の開催すらも見通せる状況ではないが、各事業者は新たな準備に追われることとなる。

 その一方で、首都圏では東京オリンピックに向けて進められていた工事が順次竣工する。JR東日本は、5月29日から6月1日未明にかけて、埼京線渋谷駅のホームを北に約350m移設する工事を実施。6月1日の始発から新ホームでの営業を開始すると発表した。