橘玲の世界投資見聞録 2012年8月23日

[橘玲の世界投資見聞録]
ロンドン五輪の陰でオフショアのメッカ・マン島の想像以上の寂れ方に思う

タックスヘイヴンと
大英帝国との関係

 イギリスの金融業はタックスヘイヴンによって支えられている。ロンドンのシティがウォール街に対抗できるのは、米国外で流通する莫大なユーロダラーを扱っているからだ。

 タックスヘイヴンの多くは大英帝国の旧植民地か自治領だ。香港シンガポールは大英帝国のアジア進出の橋頭堡として繁栄し、ドバイアブダビのあるアラブ首長国連邦はイギリスの旧保護国だった。ケイマンブリティッシュヴァージンアイランド(BVI)などカリブの島々も、多くは大英帝国の旧植民地だ。

 それに対して自治領は、イギリス領であるにもかかわらず、歴史的な経緯から一定の自治権を与えられている。なかでもチャンネル諸島マン島ジブラルタルは、ヨーロッパのタックスヘイヴンとして広く知られている。

マン島の主都・ダグラスの町並み。アイリッシュ海に面して遊歩道が整備されている (Photo:©Alt Invest Com)

 こうした自治領のオフショア金融センターでは、イギリスの大手金融機関が銀行や保険、資産運用などを行なっている。個人向けのリテール業務は、顧客の大半がイギリス人だ。

 イギリスの税法は日本と同じく属地主義で、イギリス国籍を有していても、イギリス国外で暮らす非居住者であれば海外資産に課税されることがない。

 Expat (「亡命者」を意味するExpatriateからの造語)と呼ばれる海外居住者は預金の利子や株式・債券の配当、譲渡益などの金融所得が非課税だから、彼らがイギリス国内の金融機関に口座を開設すると税務手続きが煩瑣になる。そこで金融機関は、自治領にオフショア子会社を設立してExpatの資産を預かるようになったのだ。

 チャンネル諸島には5つの島があるが、金融機関が集まるのはジャージーとガーンジーのふたつの大きな島だ。もとはヴァイキングの子孫であるノルマンディー侯の所領で、7代目のギヨーム2世がウイリアム1世としてイングランドの王位についたため、そのままイギリス王室の属領となった。

 ジブラルタルはイベリア半島の東南端に位置する戦略拠点で、長くイギリスの海軍基地が置かれていた。現在もイギリスの海外領土として、独自の議会を持つ高度な自治権が認められている。

 グレートブリテン島とアイルランド島に挟まれたアイリッシュ海の中央に位置するマン島(Isle of Man/IOM)も、自治権を認められたイギリス王室の属領だ。スコットランドやウェールズ、アイルランドなどと同じケルトの島で、公道で行なわれるバイクレースの最高峰、マン島TTレースでも知られている。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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