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8月21日 18時0分
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三種の神器 シャープ・パナソニック・ソニーは買えるか? - 広木隆「ストラテジーレポート」

三種の神器
NHKの連続テレビ小説「梅ちゃん先生」を欠かさず観ている。戦後の焼け野原からの復興〜高度成長期へと向かう昭和20年〜30年代の東京の下町、蒲田を舞台に、ヒロインの梅子の成長を家族や町の人々との関わりあいのなかで描く群像劇である。先週の放映では、そんな梅子の町にテレビがやってくる。食事処「みかみ」の主人が妻に無断でテレビを買ってしまったことからひと悶着起こるのだが、その顛末はここでは端折(はしょ)るとして、筆者が感動したのは以下の場面である。

食事処「みかみ」の主人が、娘が自分の料理が美味しくないと言っているのを聞いてしまう。娘は父親に聞かれたことに気づく。
「お父さん…」
「俺の作る飯、そんなにまずいか?」
「ううん、まずいなんていってない」
「そうか…ハハハ。テレビ、返すか」
そう言うと「みかみ」の主人はとぼとぼと帰ろうとするが凄い勢いで引き返してきてこう言うのだ。
「いやいや、そういう事じゃないじゃないんだよ!やっぱりテレビ観たいだろ!?」

そう、誰もがテレビを観たがった時代があった。昔のテレビは観音開きの木製ケースのなかに鎮座している「三種の神器」のひとつだった。

シャープは来月9月15日で創業100周年を迎える。ホームページには記念サイトが作られ「シャープ100年史」が公開されている。そのなかで「オンリーワンヒストリー」というコンテンツがあって、同社が開発してきた「オンリーワン」のプロダクトの数々が誇らしげに紹介されている。テレビの項目を開くとこう書かれている。

<国産第1号テレビ<TV3-14T> 日本におけるテレビ時代の幕を開いたのが1953年の当社によるテレビの量産化です。(中略)52年末に国産第1号テレビを発売、53年には他社に先駆け量産を開始しました。価格は175,000円、当時の初任給が高卒で5,400円の時代でした。「一家に一台」をめざし、量産によるコストダウンを進め、お求めやすい価格をリードしたのも当社です。>

なんという皮肉だろう。それから60年の年月が流れた今日、シャープを筆頭に日本の電機メーカーはそのテレビのせいで瀕死の重傷に喘いでいる。「量産によるコストダウンを進め、お求めやすい価格をリードした」結果、待っていたのは会社の屋台骨が傾くほどの苦境。シャープの創業者、早川徳次のものづくりの精神は「他社にまねされるものをつくれ」。それを愚直に押し進めた結果の苦境でもある。まさに皮肉としか言いようがない。

シャープ創業100周年を1カ月後に控えた終戦記念日の8月15日。その日に放映された「梅ちゃん先生」が、まさに食事処「みかみ」の主人がテレビを買う話の回だったわけだが、同じ15日の日経新聞1面にはこういう記事が載った。「ソニー、TV販売2割減、シャープも3割超 デジタル製品 下方修正相次ぐ」

ソニーとシャープの今年度のテレビの販売計画はそれぞれ前期比21%減の1550万台、35%減の 800万台。ソニーは欧州や中国の需要が今後も冷え込むとし、シャープもエコポイント制度終了などによる内需低迷が想定以上であることを理由に挙げた。

続く17日には「シャープ 主要事業売却」との見出しで、シャープがコピー機やエアコンなどの事業を売却する検討に入ったことが大々的に報じられた。亀山工場の分離も検討するという。液晶パネルや白物家電などに経営資源を集中し、生き残りを図るという。液晶は分かるが「白物家電?」と思う読者もおられるだろう。だが、冷蔵庫や洗濯機はテレビなどの値崩れに比べれば、まだ「値持ち」がよく利益率が高いのだ。そう、かつての「三種の神器」と言えば、テレビ・冷蔵庫・洗濯機だった。白物家電はシャープの「十八番(おはこ)」、ある意味、本来の姿に立ち返るのだとも言えるだろう。

テレビの未来
しかし、テレビを諦めていいのだろうか。16日の日経新聞「企業戦略 突破口探る」の第3回は東芝のテレビ事業を取り上げている。「ソニー、パナソニック、シャープがテレビ事業縮小を進める中、東芝だけが拡大路線を維持している」と報じている。東芝の13年3月期の世界販売計画は1600万台。上記の通り、ソニーは販売計画を1550万台に下方修正したから、これを上回り日本メーカーではトップに立つ公算が大きいという。主戦場は新興国だ。1年前に2割程度だった新興国の比率を13年3月期に45%まで高めることを目指している。

確かに、新興国の需要は大きい。「梅ちゃん先生」の熱心な視聴者である筆者はよく分かる。新興国と一口に言っても国によってそれぞれ発展段階は異なるが、高度成長期に差し掛かった頃の日本に状況が似ているのだろう。豊かになっていくという実感が、最新の、便利な家電製品を手に入れることで得られるのだ。しかし、新興国に大きな需要があることは誰もが分かっている。だからそのパイを韓国勢などと奪い合う構図は変わらない。当面は数量効果が勝るだろうが、どこかで値引き合戦、消耗戦に突入することは目に見えている。

テレビ事業の可能性は新興国の需要を取り込むことだけではない。モノは違うが、日産自動車の志賀COOはこう言っている。「クルマがコモディティー(汎用品)化することはない。単なる『移動の道具』ではなく、『移動を楽しむ道具』だったからこそ自動車産業の発展があった。」

テレビの可能性もそこにある。テレビの未来を開くことだ。例えば、スマートテレビという考え方。まだ概念だけで、はっきりとした定義ができる段階にはないが、ブロードバンドのインターネット経由で映像コンテンツを視聴できることやスマートフォンやタブレットなど様々なデバイスと連携することが考えられている。グーグルが先行して発売した「Google TV」はスマートテレビのひとつかもしれないが、普及には至っていない。テレビというよりAndroid OSでテレビを観るというプラットフォーム主体という推進の仕方だからだろうか。

前述したスマートフォンやタブレットなど様々なデバイスと連携するという点では、東芝は、同社の全録画レコーダー『レグザサーバー』に“レグザリンク・シェア”という機能を搭載した。同社のタブレット端末と連携して番組の視聴や録画番組の持ち出しなどに対応している。

スマートフォンの普及とソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の普及が表裏一体だったことを考えれば、テレビもいずれSNSともっと密につながっていくかもしれない。それを印象づけたのがロンドン・オリンピックだった。ロンドン五輪では、視聴者がテレビで観戦しながら「ツイッター」などのSNSを活用し興奮や感動を共有するスタイルが定着した。放送局側でもSNSを積極的に活用した。番組の宣伝に利用したり、選手・視聴者双方のツイートを紹介したり。オリンピックと言えば、米国ではすでに前回の北京大会の時からネット配信で五輪を観戦するスタイルが普及している。

現在、幼稚園の年長に通う筆者の娘は、iPadでYoutubeの動画を観るのも、パソコンに落としたアニメの動画を観るのも、またDVDを液晶大画面のテレビで観るのも、特段「行為」として区別する意識がないようだ。観る場所と画面の大きさだけが異なるだけで、コンテンツを視聴するという行為は同一である。テレビの将来はそうなっていくのだろう。つまり「画面の大きさ」が違うだけで - よってそれが唯一のデバイスを選択する制約条件で - コンテンツ(テレビ番組、映画、アニメetc.)を視聴するのも、ブラウザーでウェブを検索するのも、メールもSNSで繋がるのも、デバイスというものの堺がなくなっていく。ひと昔言われた、放送と通信の融合と言えばそれまでだが、それが「ハード」主導で加速するかもしれない。

アップルのiPhoneがあったからこそ、これほどまでにスマホが普及したと言っても過言ではないだろう。iPodがあったからこそ、携帯音楽プレーヤーの現在の形があると言ってもいいだろう。つまり、何が言いたいかと言うと、それらはすべて機器が主導したムーブメント(潮流)だった。スタイリッシュでカッコいいこと(同じ意味だが)、サクサク動いて使いやすいこと(これも同じ意味だ)、そうした「ハード」面の要素が決め手だった。アップルがいよいよハードとしてのテレビを開発・生産中ではないかという観測がある。現在、8800円で発売されている「Apple TV」はセットトップボックスだ。分かりやすく言うと、「iPhoneやiPadなどの端末上のコンテンツ、iTunesのコンテンツ、それから独自のVOD(ビデオオンデマンド)サービスをハイビジョンテレビに映すアダプター」である。そこからさらに進化して、いよいよ画面付きの「Apple TV」が出るのではないかと見る向きもある。すなわち「iTV」だ。それが明らかになれば、鴻海(ホンハイ)精密工業とシャープにとっての好材料となる可能性がある。

ポテンシャルに賭ける
これまではアップルがテレビの新しい未来を – スマートテレビのあり方を主導するかの前提で書いてきたが、いつまでもアップルの一人勝ちというわけでもないだろう。アップルとサムスン電子が繰り広げているスマートフォンの特許やデザインを巡る訴訟で、実はiPhoneのデザインや指を使ったタッチ操作技術が、ソニーや三菱電機のコンセプトや製品にヒントを得たものではないかという証言が注目された。日本の電機メーカーだって技術やアイデアでは負けていなかった。それは今でも変わらないだろう。

ブルームバーグが報じたニュースによると、米知的財産権者協会の特許取得上位300社のリストでは、トップ10社中6社がキヤノンや日立製作所などの日本企業だったという。米特許商標局によれば、国別でみた2011年の米国での特許取得件数は、日本居住者が4万6139件と、2位の韓国(1万2262件)の4倍近い水準だった。やりようによっては、復活のポテンシャルは十分ある。

本日の日経新聞に、ヤマダ電機の山田昇会長のインタビューが載っている。
「日本のメーカーにはまだ底力がある。ただし今のデジタル家電のように、部品を外部から買ってきて組み立てる物づくりではダメだ。中核部品を自ら保有したうえで、消費者の嗜好や市場の変化に合わせた商品を作らないといけない。」

冒頭で端折ってしまった、食事処「みかみ」の主人が妻に無断でテレビを買って起こったひと悶着の背景を書いておこう。「みかみ」の主人はテレビがあれば客が増えると思ったのだ。それに対して妻は、ライバル宝来軒が流行っているのはテレビがあるからだけではないと説明し、メニューについて面倒くさがって相談にのらない主人を批判、夫婦喧嘩はエスカレートして…。それで、例の娘とのやりとりになる。そこで初めて「みかみ」の主人は思い至るのだ。料理屋の勝負は料理の味だ、と。妻が店に戻ると、主人と娘がふたりで料理の試作にいそしんでいた。
「何してんの?」
「あの店はテレビはあるけど飯はマズイなんて言われたらしゃくだからな!テレビに負けない味にしなきゃと思ってな。」

ポテンシャルはある。日本の電機メーカーの復活に賭けるのも投資アイデアのひとつ。問題は、ここまで売られた株価をどこで拾うか、だ。

各社は人員削減計画や組織改編を示した。しかし、今後の成長戦略と、その戦略を実現するための構造改革については明確な方向性を示すことができないでいる。つまり、どこで稼ぐかという明確な絵が描けていない、という指摘は多い。それが見えない以上、投資対象にはならないという意見が圧倒的である。

それは正論だろう。しかし、「どこで稼ぐかという明確な絵」が市場に示されるころには株価は相当上がっているだろう。それが相場というものだ。通常の企業分析をしていてはエントリー・ポイントは分からない。その意味で、シャープ、パナソニック、ソニーの安値を拾うのは「投資」というより、「トレーディング」と割り切るべきだ。どこが底値になるかは分からない。売却基準(ロスカット・ルール)を定めたうえで、投資してみる。ダメならすぐ投げる。それを覚悟のうえで買う。うまくいけばロスカットに抵触せずに、戻りを取れるかもしれない。そういう水準に入ってきたように感じる。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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