「大本命の“量的緩和”はスタート後にトラブルなく走破し、トニー・マッコイ騎手により不敗記録を維持した」。これは英国の競馬新聞「レーシング・ポスト」の昨年12月29日の記事である。

 イングランド銀行は昨年3月から量的緩和策を実施している。しかし、この記事における量的緩和は、障害レースの競走馬の名前だ。妙な名前だが、この“量的緩和”号、じつは非常に優秀な馬なのだ。

 昨年は3戦に出走し、見事にすべて優勝している。名前の由来は不明だが、馬主は金融市場関連の資産家かもしれない。同馬の母親の名は“いとしいお金”号である。

 イングランド銀行のキング総裁は、1月19日の講演で上記の記事を紹介した。英国では障害レースは大観衆を集めるメジャーな競技である。

 “量的緩和”号という名の競走馬の大活躍がキング総裁にはよほどうれしかったようだ。同行の量的緩和策に厳しい評価をする人もいるからである。

 国債購入を中心とする同行の量的緩和策に対しては、市場の流動性不安を鎮めた、長期金利を低下させた、ポンド安を誘発した、と評価する声がある一方、銀行貸出は減少したままであり、効果は期待したほどではなかったと失望する声も市場では多く聞かれる。