平成22年、生活保護受給世帯のうち11%は、障害者世帯であった。障害者は基本的に、障害者となった後、一生を通じて障害者でありつづける。生計の手段が生活保護以外にない障害者も少なくない。

しばしば「税金を払わず、納税者に養われるだけの存在」と考えられがちな障害者は、自分のありようを、どう考えているのだろうか? 一生にわたって生活保護を受給する障害者は、一方的に「与えられる」存在なのだろうか?

「よく働く」と「快適に過ごす」が
両立している不思議な場所

「お金」に悩みながら、生きる意味を探る<br />生活保護に支えられて暮らす精神障害者の日常青森市のメインストリート、新町通り。ホテル、飲食店、土産物屋、公共施設等とともに、オフィスビルが立ち並ぶ。
Photo by Yoshiko Miwa

 青森駅の駅前ロータリーから、東側に伸びる青森市の目抜き通り・新町通りに入る。片側2車線の、さほど広くもない道路だが、8月初旬には「青森ねぶた祭」の舞台の1つとなる。地方の中心街によくある、ビジネス街でも商店街でもある風景。シャッターを下ろしたままの店舗・オフィスビルの空室も目に付く新町通りを5分ほど進むと、雑居ビルの4階に、特定NPO法人「サンネット青森」がある。

 サンネット青森を一言で説明すると、「精神障害者が集まったり、雑談したり、仕事をしたりする拠点」ということになるだろうか。デイサービスセンターであるとともに、いわゆる「障害者作業所」でもある。居場所であり、仕事の拠点でもある。

 精神障害者は、脳の機能・器質の障害により、自分自身や周りの環境との折り合いがつけにくい。そのため、職業生活・社会生活・日常生活にある程度の制限が必要な場合もある。それらの点を除けば、精神障害者のほとんどは、良識も知性もある普通の人々だ。

「お金」に悩みながら、生きる意味を探る<br />生活保護に支えられて暮らす精神障害者の日常「サンネット青森」が入居するビルの入り口。新町通りの、ごくありふれた雑居ビルの1つだ。
Photo by Yoshiko Miwa

 サンネット青森の朝は、午前9時のスタッフミーティングからはじまる。現在、スタッフは6名。朝のミーティングは、ごく通常の企業の「業務遂行のためのミーティング」という感じだ。

 話し合われるのは、まず、仕事内容だ。今日は、どのような仕事を誰がするのか。日中の主な業務は、地域に住む高齢者のための弁当の配達。それから、「花仕事」「花作業」と呼ばれている仕事。公園・駅前広場などの花壇への、花の植え付けや手入れだ。それらの仕事に従事するのは、利用者、つまり精神障害者たちである。

 スタッフミーティングでは、利用者たちの生活ぶりや、必要な通院が行えているかどうかも話題になる。利用者は全員が精神疾患を持っている。時に心身の調子を崩す人が出ることは、当然のこととして、織り込んで考えなくてはならない。